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無料で海外に数ヶ月滞在してアート制作しよう!~アーティスト・イン・レジデンス攻略法

みじんこアート, みじん講義

無料で海外に数ヶ月滞在してアート制作しよう!~アーティスト・イン・レジデンス攻略法

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2017年9月のフィンランドでのアーティスト・イン・レジデンスに参加中のOuma。これでレジデンス参加は5回目です。さらに上海、デンマークでのレジデンスが決まったので、人生で最低でも7回はレジデンスに参加することになりそうです。
記事ではアーティスト・イン・レジデンスについて、数回にわたり詳しくご紹介していきたいと思います^^

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アーティスト・イン・レジデンスとは?

そもそもアーティスト・イン・レジデンスとは何か。簡単に言うと「現地に滞在しながらアート制作するプログラム」です。
条件も滞在費がかかるところから、渡航費および制作補助費が出るところ、家族連れでもOKなところなどさまざま。

写真は現在のレジデンス先、フィンランドのMänttä(マンッタ)にあるSerlachius Museumのスタジオスペース。

参考リンク  滞在費無料のアーティスト・イン・レジデンス(AIR)プログラムまとめ

レジデンスにはどんな条件があるの?

レジデンスの運営は個人、美術館、ギャラリー、政府、アート団体、などいろいろです。開催地もニューヨークやバルセロナなど有名観光地から国立公園内、アフリカなんかにもあります。
気になる倍率ですが、滞在費がかかるところ(アトリエ付きで1200ドル/月くらいかかるとこがほとんど)は倍率はほぼナシ。滞在費無料~助成金が出るなど条件がよくなるところは、知る限り4500人中の3人(1500倍)みたいなところがありました。
私がこれまで受けたところは、当時聞いたところでは、バルセロナで11倍(4/45人)、ドイツで20倍(15/300人)くらいでした。

  • 滞在費:かかる・光熱費のみ・無料
  • 滞在先:個室・シェアハウス(ドミトリーのように複数人が同室なことはまずない)
  • 助成金:あり・なし
  • ビザ:不要・必要
  • 作品の寄贈:あり・なし
  • 発表機会:あり・なし
  • 期間:2週間~6ヶ月(期間を選べるところと選べないところがある)
  • 記録:カタログに掲載・団体の記録に残る・なし
  • グループでの参加:あり・なし
  • 家族(パートナーや子ども)の同居:可・不可
  • 終了後の書類提出:あり・なし
  • 地域への貢献:あり・なし(滞在地でのイベント開催など)
  • 機材の貸し出し:あり・なし
  • 各機材の専門家のヘルプ:あり・なし
  • 掃除:各自・業者
  • 空港からの送迎:あり・なし
  • 地域の施設や所属美術館への無料入館および割引利用:あり・なし(主宰が美術館の場合は必ず無料入館できる)
  • 他のアーティストと同時期滞在:なし・あり(2人~20人)
  • アトリエ:個別・シェア
  • 応募手数料:なし・35~45ユーロくらいまで(早期割引があるところも)

実際に参加が決まってからも、「滞在先を3日以上連続で離れてはいけない」「予定した機材をあまり使用しない場合には他のアーティストに使用権利を譲ることがある」など場所によって細かい条件があります。
直近のフィンランド・トゥルクでのAboa Vetus &ARS NOVA museumの場合には、別の国に行ってもOKで、参加時に渡された紙には「市内のフィットネスクラブの場所」まで書かれていました。

アーティスト側の応募条件には?

レジデンスといっても、現代アートの作家だけが参加しているわけではありません。リタイヤして時間もあり、ゆっくりアート制作しながらどこかに旅行したいわ、というアーティストももちろん参加できます(予測ですが、そういう参加のしかたも多いはず)。
合格の一番の条件は参加先との相性。現代アートとしてコンセプトが強く求められているところや、地域の人とアーティストとの交流を目的としたところなどレジデンスの要件もさまざまです。

  • キャリア:条件がある時は3~5年以上のキャリアがある中堅アーティストと指定が入ることが多い。
  • ジャンル:ビジュアルアート・映像・写真・木工・陶器・金属など(ダンスや音楽、小説、キュレーターなどのレジデンスもある)
  • 性別:女性限定というところがごくまれにある。(男性限定は見かけたことなし)
  • 出身国の指定:あり・なし
  • ワークショップ:機材利用のこと。設備の整った施設ではその機材を専門的に使うアーティストの参加が求められる。

応募の際にCVとポートフォリオの提出は必須なので、それを見ればキャリアと実力、活動頻度の予測がつきます。

英語力はどのくらい必要か?

海外でのレジデンス応募の際には、最低限、日常生活を送るのに支障がない英語力が求められます。英語圏でない場合は、もちろんその国の母語でもOK。
私のTOEIC最高点は730ですが、今は体感では600後半くらい。ネイティブの英語が半分くらい分からない。英語の映画はディズニーはほぼ分かるけど、大人向けのものは英語字幕を入れていても3分の1も分からないくらいです。でも、英語が第二言語の国での日常会話の意志疎通はほとんど困りません。
ただ、アートについての説明は日常会話では全くないので、海外に行くようになって改めて勉強し直しました。ようは「私のプリン食べたの誰?」「洗濯機を夜使うのやめて」とか言われて分かること、自分が困ったことがあった時に、そのことを伝えられるくらいの英語力があれば大丈夫。上手な英語をペラペラ話せることが必要なわけではありません。ただ、できればできるほど、現地アーティストとの交流や情報交換に有利になります。

日本でレジデンス先を探すには?

英語が苦手だけど日本でのレジデンス先を探すこともできます。ただ、日本の場合は滞在費がかかるところが多いです。実のところ、レジデンスは組織がないと運営できないわけではないので、個人で空き家を使ってやってるところもあります。
たとえば空き家を持っている知人宅などで滞在制作し、家を壊さない程度に室内に展示して人を招く、などを自主的に企画してもよいかもしれません。日本でも空き家の問題で自治体が動いているところもあるので、地域の盛り上げの一環として提案してみるというのも、交渉の余地がありそうです。

参考リンク  日本全国のアーティスト・イン・レジデンス総合データベース

キャリアアップになるレジデンスの選び方

滞在費がかかるところは、月に15万円くらいの滞在費に加え、渡航費なども自分持ちになるため、正直、今の私にはとても参加はできません。
滞在費がかからないということは、誰かがその分の費用を賄っているということ。
つまり、主宰団体がその元を取るために「活動記録を残す」「団体の存在アピールのためにプロモーションする」「地域貢献によって予算を取る」「作品の寄贈を求める」などの行動に出ることになります。こうした行動は参加アーティストのプロモーションにもつながります。
初めて行く土地で楽しくアート制作しているのもぜんぜんいいのですが、作品が安定して年収を賄えるほど「売れていない」場合、海外滞在している間の生活費は主に貯金のみで賄うことになるため、制作場所を確保するだけでは生活が苦しくなってしまいます。
そのため、次のチャンスにつなげるために、自分のアーティストキャリアを一つでも先へ進められるか、具体的には以下のことを意識します。

  • 滞在費無料以上で条件がいいところ:Selected Residency(選抜された)というキャリアにできる。
  • 作品発表機会があるところ:CVに追記できる。
  • 美術館など主宰団体がしっかりしているところ:レジデンス歴を記載した時の説得力になる。また今後、推薦状を出してくれることも。
  • 作品販売ができるところ:ビザとの兼ね合いがあるが、販売機会が得られれば、現地の市場も知れる。
  • 助成金や奨学金があるところ:Fellowship(奨学金)が取れたというのは一つの実績になる。もちろんお金も助かる。
  • 他のアーティストと出会うチャンスがあるか:情報交換ができる
  • 審査員が有力者:落ちても作品を見せる機会になる。
  • 滞在先が現代アートの盛んな土地か:レジデンスで発表機会があれば、その資料をもってギャラリーに売り込みにまわる。

まだアートキャリアもあまりなく、一度もレジデンスに参加したことがない。今はとにかくどこでも受かりたい!というのであれば、お勧めは「日本人と戦わないこと」です。
美大卒で日々描きこんでるアーティストの作品はかなり精緻。彼らとまともに戦っては勝てません。なので、はじめから彼らとの戦いを避けます。画面が細やかに入り組んでる作品と大まかな抽象では、第一印象で精細な作品のほうに軍配が上がりがちです。
「一見簡単に作られてそうに見える」作品は、その分、コンセプトをつくりこまないといけない。しかし、これを英語で伝えないといけないので、かなりハードルが上がります。同時にコンセプチュアルアートとして創りこんでる海外の作家と戦うことになるので、それはそれで大変です。
後追いでアートをはじめて、それでも彼らに勝てることがあるとしたら、英語力と情報量です。芸大卒で素晴らしい作品をつくる作家が、英語が苦手というだけで海外に出ないでくれている。そこがチャンスで、彼らがまったく知らなそうなところに応募するというわけです。
審査員の気持ちを想像してみます。日本人ばかりがいっぱい応募してきたら絞ろうと思いますが、初参加となる人種が参加希望を出してきて、作品が水準以上であれば、採ってもいいなと思うんじゃないかと。だってインターナショナル感出るでしょ?(条件が厳しいところはもちろん無理ですが、審査する側もアートの一線で活躍中というわけではないとこもある)
ウェブサイトを見れば過去の参加アーティストがしっかり出てるので、日本人がまずいなさそうなところに応募します。田舎やプログラムが始まったばかりのレジデンス先に応募できるとよいです。まぁでも探すのはすごく大変になりますけどね^^
もちろん、「どうしてもこの土地で制作したいんだ!」という理由があれば、そちらのほうが強い動機になるので、その理由をもって応募するのが一番です^^

レジデンス応募のための提出物

応募には最低限でCVとポートフォリオ。ほとんどがワークプランの提示を求められます。助成金が出るなど条件が上がれば上がるほど、提出物も多く、作品企画のプレゼンテーションが強く求められます。
提出物はデータ容量指定が入っているところがほとんど。郵送でポートフォリオを送れっていうところもあるので、指示に従います。

  • CV:これまでのレジデンスキャリアを求められることも
  • ポートフォリオ:ほとんどが10点から多くても20点までと作品数の指定がある。作品は直近のものから数年前までと言われることも。
  • 制作プラン
  • プレゼン資料:サイトスペシフィック性・キャリアにどう影響するか・このレジデンス先を選んだ理由
  • ステートメント:CVと別に求めてくるところがある
  • 推薦状:1~3通(書類として用意する場合と、連絡先のみ記載の場合がある)
  • バイオグラフィー:CV以外にバイオグラフィーの提示を求められることも
  • 制作予算:予算がつくレジデンスの場合に求められる

第2回は「無料で海外に滞在してアート制作しよう!~アーティスト・イン・レジデンス(AIR)のメリットと確認事項」、ぜひこちらもご覧ください!(*´▽`*)

合わせて読みたい  現代アートについて考える~初心者の第一歩から海外展開まで役立ち記事まとめ


みじんこは、アーティスト・イン・レジデンスが好きです!ヽ(=´▽`=)ノ

みじんくん と みじこちゃん

「ほとんどマニアだよっ」
「調べまくりだよっ!」

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