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2人なのに個展~上海展覧会のパートナー、景秋作品から考える理想と現実について

  • 3月 10 / 2019
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2人なのに個展~上海展覧会のパートナー、景秋作品から考える理想と現実について

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上海展覧会「INFINITE REPETITION / 无限循环」は、2人展という紹介になっているけど、私たちの中では「個展」という認識がある。2人で1人の作家として「個展」をやろう、というのが、出会った当初からの私たちの目標で、1年がかりでそれがようやく実現した。Solo show by one artists(複数のSがつく)それが私たちの展覧会のコンセプト。本展覧会のキュレーター、Peter Haganさんは、1つのことを景秋さんは仏教観やスピリチュアルな経験をベースに「Why」の視点で、Oumaはサイエンスの観点から「How」の視点で表していると称した。
今回は景秋さんの作品をご紹介。

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景秋さんとの出会い

景秋さん(Autumnと私は呼んでいる)は、中国系アメリカ人のギャラリスト兼アーティスト。小さい頃に家族とニューヨークに移住し、そこで育った彼女は、現在は上海でギャラリーを経営。自身もアーティストとして活動しており、ご自宅は購入したアート作品以外に、彼女の作品もぎっしり。リビングの机には2メートルくらいの絵が横倒しになっていて、数か月前にお邪魔した時にのんびりできたソファに到達する道がふさがれていた。
彼女にはSwatch Art Peace HotelというSWATCHが運営する上海のアーティスト・イン・レジデンスに半年間参加した時に出会った。

スタジオビジットの際に上海で制作していた「系統樹」という作品を見た彼女は涙を流して感動してくれた。私は「えええ」と思いながらビクビクしていたけれど、その後、頻繁にアトリエを訪れ、信頼関係をつくるためにあらゆることをしてくれた。小さなスクーターをタートル(亀)と呼び、上海中を移動してまわる彼女。Swatchでの最後の夜は、彼女がスクーターで夜の町を走り回ってくれた。

彼女の作品には「円」がよく描かれる。今回の展示では、不完全こそ完全なのだ、と繰り返し言っていた。不完全の美というのは、ほかでも聞くところなんだけど、この「円」は彼女の人生、彼女そのもので。先天的な病気があり、小さい頃から何度も手術を繰り返していた彼女。皮膚にはたくさんの手術痕がある。しばらく気づかなかったけど、聴覚にも障がいがあるようだ。自分自身に「不完全さ」を感じ続けていた彼女。しかし、彼女には素晴らしい家族があって、家族にものすごく愛され育っている。同じように、信頼する友人たちに対しても家族のように接する。私は作家が作品と一体化している作品が好きだ。作者の一部ではなく、全部と一体化しているような作品。他にも、円の数が誕生から今日までの日数を表している作品もあるのだけど、彼女には円を描き続ける理由がある。作品1点だけ見ると分からないですが、円を描いた作品がほとんどで、「円」に執着があるのはよく分かる。
これまでのポートフォリオを見せつつ、これまでの作品について丁寧に話を聞いてくれたり、信頼するキュレーターさんを連れてきたりしてくれた景秋さん。上海滞在中は彼女のおうちに泊まっていたのだけど、ダブルベッドとはいえ、彼女と一緒のベッドなので、私は正直、緊張して寝られなかった。そしたら、寝てないのにも気づいてくれて、気を使わなくて済むように気遣ってくれた。


2018年のSWATCH 5周年イベントでもメインの一つとして紹介された作品「系統樹」には、実のところ他のギャラリーからも声がかかっていた。そちらのギャラリーのほうが景秋さんのところよりもキャリアが長く、コレクターも世界各地に抱えていた(ぶっちゃけ、現地でもちょっと知られたギャラリーだった)。のだけど、結局、私が景秋さんを選んだ感じになった。単純にうまいこと売っていくなら、名の知られたところのほうがよかったかもしれない。でも、作品を売って生活するより先のビジョンが、彼女となら実現できるような気がした。アーティストなんて謎なことをやっているのに、自分の生活が目的になるのは違う気がする。だって、他の人が「アーティスト」に期待することってそういうことじゃないと思うんだ。少なくとも私は、素晴らしい作家たちを通して見える世界にワクワクしたい。

ファンタジーとリアリティーの表現



こちらは理想と現実を表したインスタレーション作品。破損している青いほうは触って動かしてOk。金色のほうは触ってはいけないもの。よく見ると、破損してあるほうは、壊してから釉薬を塗って焼いているのが分かる。なので、「意図的に」壊されている感じがあるんですよね。自然に割れてしまったのではない。この作品は展示されている「中国」という環境と合わせて想像してみると、さらにおもしろくなります。
というのも、中国ってアート作品への規制が厳しいんですよ。アートフェアなどに出す作品は、数か月前からチェックに通らないといけない。ヌードとか政治批判的なものについては検閲がかかります(香港や台湾では別)。中国人であっても、台湾や香港に行くのにはビザが必要。また、パリそっくりの町を中国国内につくっていたり(通りの名前も「シャンゼリゼ通り」)、各国をモデルにした場所も多くあります(ミニチュアじゃなくてリアルサイズなところがすごい)。国内ではVPN接続をしないとFacebookやGoogle、Twitterやインスタグラムなど海外のサービスが使えません。中国の人口は約14億人で世界一。国内に十分なマーケットがあるため、中国外の世界を全部国内に取り込んでしまって、外部をシャットアウトしても十分やっていける。
あちこちに「明らかな」規制がある場所で、リアリティってどこにあるのか。でも、実のところ、目に見えていないだけで、自分の中で規制をかけていることっていっぱいありますよね。自分たちはどこまで自分の本心を出せているのか。本当にやりたいことをやれているのか。好きなものを公然と好きだと言えているのか。どうして恥ずかしいと思っちゃうのか。そもそも、自分自身の望みを自分で分かっているのか。
私が今、自分のリアルだと思っていることは、意外と自分のリアルではなくて、「外部に信じ込まされているリアル」なんじゃないか。同時に自分が理想として持っていることも、「外部に信じ込まされている理想」なんじゃないか。かといって、外部をすべて切り離して孤立して生きるということ自体が不可能(私たちは生きている限り、誰かとつながっている。じゃあどうするか。私はシンプルに、素晴らしいものがつくりたい。

参考リンク  新人アーティストにチャンス到来!?上海のギャラリストに聞く中国アート事情

中国にある「パリ」を舞台にしたJamie xx「Gosh」のミュージックビデオはこちら↓

アート作品を通じて、自分なりに考えを出せるようになると、アート鑑賞はさらにおもしろくなります。作家が言ったことに「なるほどー」となって終わりではなく、そこから自分はどう感じるか、考えられるか、を「自分の言葉」にする。最近、あるアーティストさんからそれを教わったので、このことを最後にご紹介しました^^

合わせて読みたい  現代アーティストになりたい人のための~初心者の第一歩から海外展開まで役立ち記事まとめ


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みじんくん と みじこちゃん

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