ノーリスクで誰でもできる資金調達の手段として知られる「クラウドファンディング」。生きていくのが難しいといわれる「アート」の分野で、アーティストが行うのは「アーティストとして生きる」上で有効なのかを、考えてみました。
アート系のクラウドファンディングの広がり
2014年にはアートバーゼルが米国のクラウドファンディングサイトKickstarterと提携したとの話も出ており、クラウドファンディングはアーティストの可能性を広げてくれるように感じます。
Kickstarterを利用するには、米国の居住権があるか、法人があるかが必要であり、日本からKickstarterを利用する場合には、初期コストを50万くらい払って代行してもらうか、kibidango(きびだんご)経由で起案するのが実情になります。(おすすめは手数料が安いkibidago)
✓ 関連リンク Art Basel/Crowdfunding kibidango(きびだんご)
美術館が行うクラウドファンディングもある
興味深いのは美術館が行うクラウドファンディングプロジェクト。2015年8月12日~9月27日まで行われていた「すみだ北斎美術館」を開館するためのクラウドファンディングでは、目標の1000万円に対し、1500万円の資金調達に成功しています。
✓ 関連リンク 地域へ、世界へと“北斎”を発信し、皆さんと成長し続ける「すみだ北斎美術館」を開館するためのご支援を
こちらは「ふるさと納税」ができる地域向けのクラウドファンディングサイト「ふるさとチョイス」に上がったプロジェクト。プロジェクトオーナーが自治体なところが特徴。税金の控除対象にもなるため、このシステムによって、「自分が払う税金の使い道を自分で選ぶ」ことができます。個人的には、今後、自分が支払っている税金のいくらかを、このようなサイトで自主的に納税することで、本当に市民が望んでいるお金の使い方ができるんじゃないかと思っています^^
✓ 関連リンク ふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」
有名アーティストの案件としては、2012年に行われた写真家JRのプロジェクトで、225人から250万円を集めました。こちらはワタリウム美術館がプロジェクトオーナーになっています。
✓ 関連リンク 最も世界の注目を集める写真家、JRが日本でアートプロジェクト<インサイドアウト>
アート系が強いクラウドファンディングサイトは?
アーティストに対してフレンドリーなクラウドファンディングサイトとしては、Motion Gallery(手数料が10%と業界でも安く、金額の大小に関わらず迅速に対応してくれる)、IndieGOGO(米国のサイトだが、Motion GalleryやGREEN FUNDING by T-SITEと提携しているため、米国籍の取得や法人立ち上げなどをしなくても、日本から行うことができる)、MICRO MECENAT、Patreonなどがあります。
✓ 関連リンク Motion Gallery Indiegogo MICRO MECENAT Patreon
おもしろいところでは朝日新聞が手がけるクラウドファンディングサイト、A-portの紅型作家の案件。無名の作家の場合、支援者を自分の知り合い以外に広げるのに苦労するが、この案件では7割が見知らぬ人からの支援。大手メディアの協力により、プロモーションがうまくいった例なので、アーティストとしては期待がもてるところです(ただし、こちらの紅型作家さんは、もともと人気の高い作家さんです)。これも作品そのものの販売ではなく、グッズ化することで、手に取りやすくしていますね。また、起案カテゴリーも「アート」や「伝統工芸」ではなく、「プロダクト」になっています。
✓ 関連リンク A-port/沖縄の伝統的染色「紅型」デザインを食器に。29歳の女流作家・新垣優香が初挑戦☆
A-portは新聞社の文章校正力とメディアコネクションが強みのプラットフォーム。資金の払い出しもかなり早く(月末締め5営業日後あるいは、翌15日締め5営業日後。手数料1%アップで終了から5営業日後の支払いも可能)なりました。その分、起案審査のハードルが他より高め、また手数料が20%(目標未達のAll inの場合は25%)と高めです。現在、私がA-port起案中なので、どこまで拡散されるかは、私自身も楽しみにしています。
※ただ、見てくれる人が増えても、支援が進まないとすれば、それはもともとの企画自体が人に刺さるものになっていないということなので、それは私自身の反省事項として心に留めておきます。
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華やかな結果を目にすると、自分もやればできるのでは、という気がしてきます。ただ、高額支援が集まるのはあくまで有名人や自治体など、すでに人気があったり拡散力がある団体が行った場合。今までに2度、アート系でプロジェクトを立ち上げた私としては、まったく無名の個人が自分の作品を売りたいという場合には、自分から声を上げていく必要が絶対にあると考えています。ですが、これは当然のこと。お店だってオープンしてすぐに人が来てくれるわけではありません。内装を素敵にデコレートして、来てくれそうな人に声をかけて。話題になりそうなことを考えて。通常、誰もが行っていることが、アーティストに限っては不要なんてことは絶対にないです。
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余談ですが、私が初めて行ったNYに夢を掲げる企画では、実際にニューヨークに行ったら、夢の壁Wishing Wallがその年からなくなっちゃっているというザマになってまして。
個人利用に朗報!CAMPFIREが手数料5%に引き下げ→再び8%へ。
2016年2月24日に、クラウドファンディングサイトCAMPFIREが手数料を20%から5%への大幅引き下げを発表(※2017年2月15日、手数料は8%に引き上げられました。最新の手数料はサイトでご確認ください)。これは、個人が一歩を踏み出す際の大きな後押しになる。たとえば、5年間家から出られなかった人が、「家を出て、自分で電車に乗り、お土産を買って帰る」を目標金額3万円でスタートすることなんかも可能になるってこと。たった3万円の小さな旅かもしれない。でも、本人にとっては、大きな第一歩。本人が踏み出した一歩を500円から応援することができるなら、きっと多くの人が賛同するだろう。
CAMPFIREは審査が軽くなり、起案ハードルがかなり低くなった。誰でも起案しやすくなった代わりに、目標額を達成しても実施が困難になるような炎上案件も増える可能性がある。クラウドファンディングはお金を出して支援するパトロン側と、起案者の信頼関係で成り立っている。幸い、日本ではプラットフォームが起案者を精査しているおかげで、業界全体の信頼度も担保されている。実際、米国最大手のKickstarterも目標を達成したにも関わらず、予定通りのリターン発送が行われなかったり、その後、起案者からの連絡が途絶えたりなどで、炎上する案件が散見される。しかし、それでありながらKicksarterにはやはり、「新しく挑戦的なアイデア」があふれるサイトとして、見るものをワクワクさせてくれる力がある。
クラウドファンディングのリターン価格は、正規販売のものより「安め」に設定されているというのが、支援する側にとっての共通の認識。おもしろいものを安く、人より安く手に入れられる。しかし、起案者側としては、安くしておきながら、サイトに手数料も取られるわけで、これがけっこうバカにならない。なので、実際に起案すると、この手数料はかなり大きいことに気づかされる。もちろん、サイト運営者側からしてみたら、3万円の案件で5%では1500円にしかならないわけで、運営継続が非常に苦しい。(低額案件のほうが、起案に慣れておらず、指導工数がかかるケースが多いため)
このようなことを考えると、プロジェクトページの指導・修正にはほぼ時間をかけず、起案者個人の裁量に任されることになりそうです。でも、実際に起案してみないと分からないことは多いし、何より、クラウドファンディングはノーリスクで何度もぶつかれるわけなので、魅力的なページをつくれるようになるまで、自ら切磋琢磨すればいいと思えます。
固定ファンがついた案件であれば、CAMPFIREに乗り換える起案者も出てくるのでは。とはいえ、プラットフォームが乱立し、案件争奪が行われる中、「引き」になりそうなリピート案件については、プラットフォーム側から公の手数料ではなく、手数料の引き下げを提案・交渉可能な気がしますね。
✓ 関連リンク クラウドファンディングのCAMPFIREが手数料を20%から5%に大幅引き下げ「小さな声も拾い上げられる場所に」
結局、クラウドファンディングは使ったほうがいいのか?
さて、無名の個人が「ライブをやりたい」「レコーディングしてCDを出したい」「写真集を出したい」「個展をやりたい」という夢があったとします。普通に考えて、プロジェクトを立ち上げても、友だちが応援しくれるだけな気がします。それなら、やらないほうがいいのか?
私は、まだやったことがないなら、1度はプロジェクト起案することをお勧めします。
なぜなら、クラウドファンディングで得られるお金は「顔の見えるお金」だからです。特に、友だちからの支援であれば、自分の大事な友だちが必死に稼いだお金を預かった重みは、自分がバイトして稼いだお金よりもずっと価値が高く感じられるでしょう。正直に言えば、クラウドファンディングは自分での声かけやリターンの送付、お礼メッセージの返信など、やることも多く、単純な資金調達だけで考えたら、コンビニでバイトをするほうがよっぽど楽に稼げます。
それでも、自分が本当にやりたいことで、「自ら声を上げる」ということ。それに応え、具体的に応援してくれる人のありがたみを、芯から実感できるはずです。特に、初めての挑戦であれば、応援してくれる人も多いでしょう。さらに、CAMPFIREの手数料引き下げのニュースは、個人の夢を叶えるための追い風になりそうです^^
私が初めてクラウドファンディングを使ってニューヨークに行った時、43人の人が20万円を出してくれました。ほとんどが私の大事な友だちです。実際にニューヨークで個展をした時、現地でのギャラリー探しや情報収集など、自分のお金だったら「このくらいでいいか」というレベル以上まで、ちゃんと行動できました。
国連総本部にメールし、レディガガのパパの経営するレストランに営業に行き、ウォールアートのメッカ、5pointzにメールし、タイムズスクエアの運営にメールし、YOSHIKIなどがライブをしたこともあるジャパンソサエティに連絡し。リターンでお約束していた「みんなからいただいた夢」を展示できる場所を探したんですね(当初は現地のWishing Wallに書いてくるはずだったが、渡米した年からWishing Wallが廃止され、リターンの遂行が叶わなくなったため)。
結局、どこにも展示はできませんでしたが、その時の自分ができる限りのことをやってきました。こうして動けたのは、お金を出してくれた方たちのおかげです。
また、クラウドファンディングを立ち上げたことで、強固になるつながりはいくつもあるでしょう。プロジェクトをリリースし、クローズするのは大変です。だからこそ、本人の「本気」が関係を強くしてくれると思います。
2016年2月19日から、私は新しくクラウドファンディングを立ち上げました。世界中の人から絵を集め、空みたいに1つの作品をつくろうというプロジェクトです。この記事を書いている現在、24人の方から124,500円(41%)が集まっています。こうして公開してプロジェクトを立ち上げた以上、もしも達成したら、私は本当に、世界中にこのSORAを広げられるまで、このプロジェクトを続けざるを得ないでしょう。
諦めようかと思った時には、必ず、今、支援してくれた大事な人たちの顔が浮かぶはず。自分の夢は、自分が動かなければ叶わない。でも、自分を予想以上に動かしてくれるのは、確実に誰かの支えなのです。
ぜひ、クラウドファンディングを使って、「自分を超える力」を実感してみてください。そして、今も、あなたを支えてくれる人たちの存在に感謝を。
みじんこは、世界で活躍するアーティストを目指す人を後押しします!ヽ(=´▽`=)ノ