世界中を包みまくっていたクリストさんが84歳で亡くなられたことがニュースになっていましたね。心よりご冥福を申し上げます。
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妻のジャンヌ=クロードさんと同年同日生まれというのがすごいですね。なんだか運命的。お二人は「クリストとジャンヌ=クロード」名義で世界各地のいろんなものを包みまくっていました。2021年にはパリの凱旋門を包む計画があり、これはコロナの影響で延期になったものの、予定通り実行されるようです。
包み方もとてもおもしろいのですが、布をブワってかけるわけじゃなく、凱旋門の形が浮き出るように包むんですよね。だから、細かい装飾は見えなくなりますが、凱旋門の「カタチ」は包まれることによって強調されることになります。
「2度と見られないことを知っているから、たくさんの人が見に来るのです。プロジェクトは所有できない、買えない、入場料も取らない、すばらしく非合理なものです。ありふれていない、役に立たない(ユースレス)ことこそが、クオリティーを支えているのです」
(美術手帖https://bijutsutecho.com/magazine/news/headline/22045より)
✓ 参考リンク クリスト、84歳で逝去。世界各地で大規模な梱包プロジェクトを展開
いやはや、、ほんとにすごいアーティストで、彼らと同時代をかすって生きられたことが幸福です。
「凱旋門、包みたいよね」
「包みたいねぇ」
ってなかなか日常会話で出てこないですよね。
プロジェクトによっては実現まで20年くらいかかり、かかる費用も何億円規模でかかっていて。計画スケッチを売ったりあちこちから資金集めをし、包まれる側との交渉の末に包まれても、永遠に包まれているわけではないので、一時的なものです。
「包む」という行為をこれだけ大掛かりに、無駄に、愚直に実行してるのはほかに類がありません。
包まれるというシンプルな行為で、建造物がこれほどまでに美しく見えるということも驚きなのですが。ここで「包む」ことをもう少し丁寧に考えてみます。
包むことは「隠す」ことでもあり、また「保護」することになります。ギフトラッピングにあるように、物が包まれていると「出てきた時の喜び」が大きくなりますよね。中身が分からないサプライズもうれしいですが、中身が分かっていても、「隠れる→出てくる」というのはとてもうれしいものなのだな、と。これ、永遠に包まれっぱなしだったら、たぶん「ちょっともう中身出して」ってなると思うんですよね。でも期間が決まっていて、ちゃんと開かれることが分かっているから喜べるんですよね。隠されているものは出てくることが分かっているからうれしい、包まれている物の重要性を再認識できるという風に考えることもできます。
もう一つ、中身を本物だと担保させるものは何か、というのを考えました。たとえばルパンみたいな怪盗がいて、包まれている隙に中身をそっくり入れ替えて、凱旋門をまるまるどっかに持ってってしまうってことも、可能性としてゼロではないです。
でも、私たちは包まれて出てきた物は本物のままだと信じています。一度全く見えなくなったにも関わらず。
ある時、自分の顔に大きなほくろが増えていてびっくりしたことがありました。こんなのちょっと前までなかったはずだ、いつの間にできたんだ。そう思って数年前の自分の写真を見たら、同じ位置にほくろがありました。
毎日自分の顔を鏡で見ていたのに、そんな大きな変化があったことすら気づかなかった。私たちはどこまで物をちゃんと「見て」いるんでしょう。
ちゃんと見ていないのに、それが本物かニセモノかなんて分かるのでしょうか。
ルーブルにあるモナリザは実はニセモノだという話があります。
アポロ11号は本当は月に行ってないという話があります。
何がほんとで何がニセなのか。
これだけ大掛かりに隠されたのに、私たちは中身が変わらず本物であると信じています。
中身を入れ替えるなんてあるわけないって思いそうですが、そもそも凱旋門を包むっていうこと自体がありえない出来事です。ありえなさそうでも起こる可能性はゼロじゃない。その物が「本物」であるかどうかは、自分が信じることでしか担保されていないのかもしれない、と感じましたよ!
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今日も読んでいただきありがとうございました!
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みじんこは、包まれたいよ!ヽ(=´▽`=)ノ