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全盲のネパール人に案内される完全な暗闇の世界~ダイアログ・イン・ザ・ダーク「能登への旅」

  • 4月 30 / 2025
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みじんこレビュー

全盲のネパール人に案内される完全な暗闇の世界~ダイアログ・イン・ザ・ダーク「能登への旅」

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ダイアログ・イン・ザ・ダークは、光が差さない真っ暗闇の世界を、目の見えない人のアテンドで探索する体験型エンターテイメントです。

2025年春に「能登への春の旅」をコンセプトに、列車に乗って能登に向かい、能登を音や味で体験して帰ってくるまでの旅を、暗闇の中で味わえるイベントが実施されました。

「能登への春の旅」体験レポート

少人数での暗闇体験では、参加前にまずは一緒に参加する人たちとご挨拶。明るい部屋からいきなり真っ暗闇に入るわけではなく、まずは薄暗い部屋に入って徐々に暗闇に慣れていきます。

この時に、お互いのニックネームを覚え、呼びかけ合えるようにしたり、白杖の使い方や周囲に触れる時の触り方の注意点を習ったりします。

周りに触る時は、指の甲で触り、触れた物を確認した後に指先で触るのがいいそうです。これはいきなり手のひら側(指先が触れやすい側)で触ると、自分も触られる側(相手が人の場合)もびっくりしてしまうからだそうです。

なるほど、指の甲でそっと触れ、問題がなければ指先・手のひら側で確認する、みたいな触り方を意識しておくと、人間関係での事故を起こしにくいのかもですね。

白杖を使いながらゆっくり暗闇の中に入り、周囲を探索していきますが、ブランコに座ったり、参加者と一緒にジャンケンしたりして友好を深めていきます。

詳しくはネタバレになるので避けますが、みんなで列車に乗り、海の音を聞きながら能登の太鼓を体験。さらに能登の名産をいただいて帰ります。小銭を持って行って、暗闇の中でお金を払うのですが、小銭の持ち合わせがない場合は、後で支払うことも可能でした。

メニューはいろいろありましたが、能登のイチジクサイダー『のトニック』はめちゃくちゃおいしかった!暗闇なのでパッケージが見られないのですが、実物はこちらから購入可能なので覗いてみてください。

会場内ではダイアログのオリジナルグッズのほか、能登のお菓子なども購入可能。また、寄付も受け付けていますが、収益の一部は能登復興のための義援金としても活用されるとのこと。

全盲のアテンドの方の印象

今回、自分をアテンドしてくださったのは、なんと外国人!日本語がペラペラで、ご出身はネパールの方でした。生まれながらの全盲で、日本語は点字とパソコンで覚えたと言っていました。アテンドの間も、ジョークを入れながら楽しく案内してくださり、とても楽しい時間を過ごせました。

暗闇の中でおやつをいただく時間があるのですが、その時に「目の見えない」世界についていろいろと話を聞かせていただきました。

自分の目が見えないことをいつ知ったかという質問に対し、「今も見えない」という実感はない、とのことでした。生まれながら見えないので、それがご本人にとっては当たり前のことであり、周りの人に言われるから「自分は見えないのか」と思うだけで、自分にとっては見えないからどう、という認識はないんだとか。「魚は自分が海を泳いでるとは思わないんじゃないか、それと同じ感じです」とおっしゃってました。

あと、手の触り方や話し方のニュアンスで、相手の人柄までわかるというのはおっしゃってました。これは目が見えても分かる気がしますが、感じている解像度の高さはなんか違う気もしますね。

ネパール出身で日本語を勉強し、ダイアログで働いてることからも、非常に好奇心旺盛な方だと思うのですが、バンジージャンプや登山も大好きで、高度6000メートルのところまで登山したこともあるそうです。

アテンドされながらすごいな、と思ったのは、声や音で誰がどこにいるのかを把握されてるっぽかったところです。声を出さずに自分だけ列車の奥を探索しに行ったら、名前を呼ばれて「戻ってきて~」と声をかけられたので、何で分かるんだろうって思っちゃいました。

他にも、みんながバラバラに注文したメニューを誰が何を頼んだか、メモも取らずに完全に覚えてるようでした。

参加者の方の中には、「暗闇の中だと、普通に会うより仲良くなるのが早い気がした」という感想をおっしゃってた方がいました。暗闇状態だと、どうしても周りの人と危険を伝えあって助け合ったり、発見したものを共有して楽しみあったりすることが増えるので、そういう時間を最初に過ごせることで、仲良くなりやすい気はしました。

今回は「こういうイベント」に一緒に参加してる人という嗜好が近い人たちなので、そういうのも仲良くなりやすい理由かもしれません。

自分はダイアログ・イン・ザ・ダークが大好きで、リピーターなのですが、その分、体験自体の価値よりも普段は話せない「全盲の案内人さんの話」や「一緒に参加した人の自分とは違う感想」を聞けるのがとても価値があるなと感じます。

自分とは違う感覚・文化・背景をもつ人とじっくり話すことには発見が多い。外国人の友達を連れてって感想を言い合うとかやってみたいですね!

初体験の時には、暗闇の世界に入った途端に、周囲に撒かれた葉っぱの香りがすごく鮮やかに感じられて、とてもワクワクしたことを覚えています。みなさんもぜひ、体験してみてください!

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