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可視化された生命力、エルネスト・ネト

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可視化された生命力、エルネスト・ネト

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2012年に初めて、エスパス・ルイ・ヴィトン東京での個展「Madness is part of Life」を見て以来、世界で一番大好きなアーティストがエルネスト・ネトさんです。いろんな理由をつけることもできますが、とにかく作品が感覚的に好き!生きてるみたい!です。

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「Madness is part of Life」は、人の手で編みこまれた巨大な作品で、見た目が子宮みたいな感じになっています。少人数ずつ中に入れるのですが、一番奥のところで人々がごろごろっと寝てたんですね。自分もそこに混ざりながらごろごろできます。 その後、自分が現代アートをちゃんとやってみたいと思い立った時、改めて作家の名前を知ったのですが、くわしく知れば知るほど、エルネスト・ネトの作品があれば、自分の作品はこの世にいらないんじゃないかと思うようになりました。

合わせて読みたい  エルネスト・ネト インタビュー – ART iT アートイット:日英バイリンガルの現代アート情報ポータルサイト

初期の自分がやりたかったのは、
・体験できるアート
・大型のインスタレーション
・生命や癒しをテーマ

だったのですが、エルネスト・ネト作品では、すでにこれを私の1億倍くらいすごい規模で展開してたんですね。

完成度も高く、見るだけで惹きつけられる強力な説得力があります。彼の作品と違う物でないかぎり、自分がアートをやり続ける意味がないなと考え、その後は、どうしたら違う視点を持てるのかというのを考えました。 大好きな作品であり、かつ、自分のアーティストとしての方向性についてもすごく問いかけられた作品です。 ネト作品は視覚や触覚に訴えるだけでなく、スパイスが使われているものもあり、体験したことはないのですが「香り」もすると思うのですね。なので感覚にフルに訴えかけてくる要素も強く、その見た目の質感も含め、非常に「生命」を感じさせるし、鑑賞者の「生命」を刺激する作品だと思っています。 私の作品との大きな違いとしては、私の作品は増殖的で完成形が確定していないことが多いこと(オープンエンドプロジェクトが多い)、鑑賞者が関わることで作品の全体像が変化すること、です。

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ネト作品で特に興味深いのは「重力」を作品に使っていることなんですね。スパイスが入ったものが詰められていて、それが重さをもって垂れ下がっている感じ、重力によって地球の中心に向かっている感じがします。 重力への注目っていうのがとてもおもしろいなと思っているんですが、ふだん暮らしていて、常に重力の影響を受けているのに、重力って意識をしてないですよね。 私はスキューバダイビングをやったことがあるんですが、海流のない海の中に浮かんでいるってとても不思議な感じなんです。上も下も分からない。ただ飛んでいるような感じ。 宇宙飛行士が、宇宙にずっといると筋力が落ちると聞いたことがありますが、地上を歩いたり座ったりしながら暮らすっていうのは、気づいていないけれど、いつもこの重力という力に抗っているということです。 もっといえば、重力とうまくバランスを取りながら暮らしているという感じです。

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重力とバランスをとっている力っていうのは、もしかしたら人間がもっている最小の生命力ではないか、という気がしたのです。 地上で生きるためには必ずもっていなければならない力としての、最小単位の生命力で、誰もがもっているものではないかなと。

垂れ下がっているものがそのまま1つの生命力単位を表しているようで、それが可視化されているというのを、とてもおもしろいと感じています。 色にもかなりのこだわりがあるようなので、色のイメージから考えられることについては、また改めて考えてみたいです。 ちなみに、一番気になっている作品はこちら。

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謎の生物になってる感じですね。身に着けることで全身を使って自分自身を認識できそうです。着てみたい。。 自分が現代アートをやり始めた時、目標の一つだったのが、「こんなに素晴らしい作品をつくるアーティストと話せるようになってみたい」でした。

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アルというサイトのけんすうさんのアドバイスのおかげで、2020年はその夢が叶い、これらの作品をつくったエルネスト・ネトさんご本人に会うことができました。 「あなたの作品を見て、やりたいことがすごい規模で全部やられてしまったので、私はアートをもうやめようかと思ったことがありました」 と言ったら、「誰でもその人のオリジナルのものが必ずある」とおっしゃってました。
これまでに海外のアートプログラムに多く参加してきて、いろんなアーティストと話してきましたが、エルネスト・ネトさんは確かに別格だなと私は感じました。 私もネトさんのようなアーティストになりたい。ご本人に会えたことで学んだことを、これからも生かしていきたいなと思います。 エルネスト・ネト作品を見かけた時にはぜひ、五感だけでなく、重力の存在にも注目してみてくださいね!

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