2016年1月~3月まで、細胞アーティストOuma(オーマ)はスペイン・バルセロナのギャラリーに滞在し、アート制作・発表を行いました。アーティストが現地で滞在制作・発表をするプログラムのことをアーティスト・イン・レジデンス(AIR)と呼び、日本も含め、世界中で行われています。バルセロナの滞在もAIRの1つです。今回は、滞在先のギャラリーオーナーであり、アーティストのWerner Thöni(ヴェルナー・トニー)さんにお話を伺ってきました。
Werner Thöni Artspace WTAとは?
スイス出身のアーティスト、Werner Thöniによって2013年にバルセロナに設立されたスタジオ(アトリエ)を兼ねたギャラリースペースです。WTAは、誰にでも開かれたアートをビジョンに掲げ、有名無名に限らず、真に革命的なアーティストへの発表機会を提供しています。ギャラリーを訪れる人とアーティストの距離を縮め、コミュニケーションを重要視するとともに、商業的アートではなく、プロフェッショナルかつ新しいアートを多くの人に楽しんでもらえる場所として、アートをアーティストや大衆に返すことを目指しています。
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10代の頃から独学でアートを学び、現在に至る
Wernerさんは、もともとは小学校の先生。家庭の事情でバルセロナに移り住みましたが、アートは10代の頃から独学で学び始め、現在も毎日のように制作活動を行っています。アート関連書籍などで日々、学びを深めていますが、最も学びとなるのは「やってみること」だと言います。インスピレーションは待っていても降ってこない。ハードに行動し続けることで初めて得られるものだ、とも。
制作スペースと展示スペース
WTAには展示発表を行うギャラリースペースと、制作スペース、レジデンスアーティストの居住スペースがあります。居住スペースはギャラリーの中2階に位置し、カーテンを開けるとすぐ下が制作スペースになっているという、まさに制作のためのスペースです。これまでに8ヵ国から8人のアーティストのレジデンスを受け入れており、Oumaは日本人アーティストとしては初参加でした。ほかに、キッチンやバスルーム、3メートル近い大型作品が創れる制作エリアや倉庫スペースも備えられています。
絵の具の飛散やスプレーの使用なども気兼ねなく行えるスペースなので、制作に集中したいアーティストにとっては、非常にうれしい環境です。また、展示に必要な什器(じゅうき)もそろっています。
海外からのアーティストを受け入れ始めた理由
もともとは多くのアーティストが制作するシェアアトリエを使っていたというWernerさん。制作のためにより良い環境があれば、と思っていたところ、こちらのスペースが見つかり、移動することに決めたと言います。シェアアトリエでの制作中には、若いアーティストたちと話ができることが刺激的なインプットとなっていました。ですが、1人のスペースに移ってからそのような機会が少なくなり、もっと様々なアーティストたちと議論する機会があれば、という思いからアーティストインレジデンスのプログラムを始めたと言います。
WTAでは、これまで一度も個展を開催したことのない地元アーティストを対象にしたアートコンペティションも開催。優勝者には、WTAでの2ヶ月の個展開催の機会が与えられます。ホワイトスペースを自由に使える個展機会が得られれば、自身の制作のモチベーションにもなるとともに、自分の制作のクオリティを見直し、新たなチャンスを掴む良いきっかけとなります。
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「良い」アートとは何か?
すべてのものは、アートになりうると話すWernerさん。ただし、すべてが「良い」アートなわけではない、と言います。Wernerさんの考える「良い」アートとは、「コンセプトが明確であり、感情を動かし、訪れた人のリアクションを引き起こすもの」です。レジデンスアーティストの選抜には、まずその作品によってWernerさん自身の感情が動かされるかどうか、を一番の基準として判断しています。
アーティストとしてのこれから
市内に100件以上のギャラリーやアートセンター、美術館の混在するバルセロナ。ピカソゆかりの場所やガウディ建築も多く存在するバルセロナは、小さな町ながら9つの世界遺産を擁しています(2016年現在)。アートの町バルセロナから、さらに世界へと活躍の場を広げたいというWernerさん。プロフェッショナルな人たちとの繋がりを深め、存在をアピールしていきたいと、今後の意気込みを聞かせてくれました!
議論によって開かれる可能性
今回、お話を伺ったWTAオーナーのWernerさんは、ギャラリストというよりアーティストとして、広く海外からアーティストを受け入れています。私自身は、制作を誰かと共にすることは、これまでほとんど経験がありませんでした。人と議論を交わすことで、自分が気づいていなかった可能性に気づかされ、さらに作品を一歩深めることができます。日本にはもともと、議論する文化が根付いていないので、この経験は私にとって非常に貴重なものでした。
アーティストとして、私が大事だと思うのは、何がアートであるか、何が「良い」アートであるか、自分なりの基準をもつことだと思っています。この基準は灯台のようなもので、これがあることで、自身の作品がどちらに進んでいるのか、「自分自身」の存在を知ることができます。それは、作家の分身である「作品」の存在を知ることにもつながります。
また、世界で活躍したいと望むのであれば、必要なのは「英語力」。チャンスがどこで降ってくるかは分かりません。どんな時でも自分の作品の説明を英語でプレゼンできるくらいの英語は準備しておきたいですね!^^
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