あいちトリエンナーレの作品を紹介していくシリーズ。北京出身のアーティスト、葛宇路(グゥ・ユルー)さんの作品から、所有と名前について考えてみました!あいちトリエンナーレは、2019/10/14までやっているので、間に合う方はぜひ!
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葛宇路という道路
こちらの作品は、北京の小さい道に「葛宇路」という作家本人の名前をつけ、標識まで作って勝手に立てたところ。次第にみんながその道を葛宇路と呼ぶことになり、検索でも道の名前としてひっかかるようになり、すっかりなじんだところで作家が「これ、自分の名前」って言い出して話題になりまくり、「撤去や!」ということで慌てて撤去して別の名前が政府によって正式につけられた、という作品です。
一言でまとめるなら、中国の道路に自分の名前をつけて浸透させて怒られた、です。
✓ 参考リンク 「葛宇路」(あいちトリエンナーレ2019)
中国の地図アプリ・百道で検索するとこの道は出てこないんですが、Google Mapだとちゃんとあるみたいで。
場所に対するコメント見たら、称賛コメントが3つ入ってましたww
(Google による翻訳) 政治的多元主義(シンボリックではない)の後、有名なアトラクションになります。
(原文)
等政治多元化(不是象徵性)後會成為一個著名景點
太666了哈哈哈哈
到作品(☆对视☆),(☆j8☆), 特来支持
※666は中国のネットスラングで「いいね」の意味。
展示には「葛宇路」に関する記事やニュース番組なども紹介されていました。
この展開だけでも十分おもしろいんですが、もう少し中国の背景を知るとさらに興味深いです。中国って「私有地」がないんですよね。土地は全部国のもの。国から借りた土地に建物を建てる、みたいになってるんですね。名前っていうのは「所有」を表すものでもあるわけですが、作家の名前がついたおかげで、この道路はまるで作家の「所有物」みたいになっています。それがまるで、私有地がないはずの中国における「聖域」のようです。じゃあそもそも所有ってなんなんだろう、と。韓国では地主が非常に儲かる構造になっているため、地主が神みたいだ、みたいな言葉もあるようです。もともとは誰のものでもなかったはずの土地を区分けし、所有者を決めたせいで多くの争いが生まれたし、でも同時に区分けは自分(たち)を守ってくれるものにもなった。
誰のものでもないものがあったとして、それに名前が書かれていたら「その人の物だ」と自動的に認識してしまいますよね。たとえば冷蔵庫の牛乳に「みじんこ」って書いてあったら、勝手には飲みにくい。それくらい強力に所有と名前が結びついている。さらにこのアクションによってGoogleにまで作家の名前が認知された。名前に紐づく所有や価値が分かりやすく可視化された作品で、私はとても好きです^^
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みじんこも、道になりたいよ!ヽ(=´▽`=)ノ