日本の現代アートを盛り上げるためには何が必要か。まずは「現代アートをやる人」が増えること。それと、楽しみ方が分かる人が増えること。ひととおり考えてみて、日本には「現代アートの面白さを分かりやすく伝える人」が少ないのでは、という結論に達しました。次はその辺を考えるとして、今回は現代アートのアーティスト向けプラットフォームについて考えてみました。
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現代アートとファンエコノミー
先日、こんな記事を見つけました→「僕はインスタやFacebookがそろそろ終わると思っている」。消費者がファンに代わり、ファンが支えるファンエコノミーになるという話。そして、初期から支えるファンにメリットが多く還元されるようになるといいと。
これを聞いて「おお、まさに現代アートや!」と思ったわけですが。現代アートって応援してた作家が活躍して作品の価値が上がると、初期に買った作品が10倍、100倍と価格上がっていくんですよね。また、初期策を持っているというのも貴重だから十分、自慢材料になるし、それが資産としてもかえってくるわけだから、こんなに嬉しいことはない。「ファン」というよりも、売り出したいアーティストの作品を買わせてみんなで価値を釣り上げて儲ける、みたいなのもたぶん行われているので、完全なファンエコノミーではないんですが、たぶん、こういうのもネットのおかげでもっとファン化してくんじゃないかな、って思っています。言いかえると、ファンという集団の声を無視できなくなっていく、というか。
✓ 参考リンク 僕はインスタやFacebookがそろそろ終わると思っている
現代アートをつづけるために必要なこと
ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、私自身は美大を出たわけでもなく、元が獣医なのでアート系のコネがあったわけでもありません。細胞っぽいドローイングを書き始めた頃には草間彌生さんの名前も知らなかったくらい。2013年にUNAC TOKYOというギャラリーで個展(企画展)をさせてもらったことがきっかけで「ほんとにこれを真面目にやってみたいな」と考え始めますが、当時、自分のウェブサイトもなかったし、作品点数も全部で10個あるかどうかみたいな感じでしたね。
その状態から試行錯誤しつづけて今日に至るわけですが、独学者がつづけていく、だけでなく活動の場を広げるために必要なのは1.小さな成功体験、2.情報、3.作品を見せる場かなと。たぶん、美大出身とかだと戦い方が違うはず。そっちは分からないので、自分の状況を鑑みて最適化していただけるといいかと。とりあえず、この3つを踏まえた上でどんなプラットフォームがあるといいか掘り下げてみましょう。
現代アートプラットフォーム構想
トップページの構想案としてはこんな感じ。ランキングをつけてしまうと優劣ができてしまい、下位の作品が見られなくなってしまう、という話を聞いたことがあるので、サイトはランク化しません。写真、インスタレーションとかカテゴリで検索、色・サイズ・雰囲気・予算で検索、みたいなのはできると便利そう。
図にある「目標達成」については下記で説明。
1.小さな成功体験
何をつづけるにしても大事なことなんですけど、自分に小さな目標を与えて、ちょっとずつ達成させていくと、時間はかかっても確実にステップアップします。参考画ではMoMA PS1とか言ってますが、「作品を今月10点仕上げる」「いつもより大きい1メートルの作品を仕上げる」「普段使わない素材を3種類試す」とかそういうのでいいです。今までやったことがないけど、自分の進歩のためにやってみたいこと。それを期限付きで公表する。それを達成するために必要なアクションリストも自分で決めておいて、1つずつ達成していく。たとえば「画材を買いに行く」「モチーフを20点考える」とかですね。こういう頑張ってる姿が見える化していると、ファンも応援しやすいし、誰かのそういう姿って他の人にとってもエネルギーをもらえるんじゃないかなって思うのです。
それに、画材買いに行くみたいな簡単なことでも、達成できると「自分頑張ったな」っていう気になる。達成ボタンを押すと、サイト側でおめでとー!みたいな演出があるといいですよね。理解者がいない最初の頃って、小さな成功体験が積み上がっていくのはつづける秘訣になります。あとは、ファンコミュニティの確立。アーティスト「みじんこ」ページに、「おめでとー!がんばったね!」みたいなコメントをユーザーが入れられるようになっている。また、ここには目標達成に必要な情報をコメントすることもでき、そういう情報コメントについては「役に立った」ものから順にプラットフォーム全体でシェア。そうすると、他のアーティストにとっても助かります。
ただ、ファンがコメントする情報については、一定期間はオープンにしない、という期限設定を選ぶことができます。当然、ファン心理としては応援している人に一番活躍してもらいたいわけですから、いい情報があったら、まずはその人に役立ててほしいはず。ただ、すべての情報は半年か1年後には公開されるようにする。そうすることで、現代アートという業界全体のためになるからですね。アーティストもファンも、広い意味では業界全体を支える仲間なわけですから。こうして精度の高い情報を残しておくことで、自力でなんとかやってみたい、という人にとっては本当に助かります。このみじんこブログもそんな独学者の誰かに届けばいいなっていう気持ちからつづけてますが、私自身もネットの情報に助けられてここまで来ているんですね。
具体的にはシムラヒデミさんというアーティストさんが、かなり詳しいアーティストのための情報をブログにまとめていて、そちらでよく勉強していました。アーティスト・ステートメントっていうのがあるんだ!って知ったのもシムラさんのサイトのおかげです。それが2013年8月だったので、その頃にはまだ自分はステートメントってものが知らないレベルだったんです。日本のアーティストで後進のためになるような発信をしてくれる人といえば村上隆さんがいますね。GEISAIからデビューできた人もいるでしょうし、芸術闘争論・起業論はバイブルのように読みまくりました。あと、書家関係ではART SHODO TOKYOという現代アート書向けのフェアをスタートさせた山本尚志さんの貢献は大きいです。私はそこまで大きな動きはできませんが、せめて自分の歩んできた足取りを公開することにより、業界全体へのささやかな貢献になればいいなとは思っています。
✓ 参考リンク 現代美術作家シムラヒデミさんのサイト
2.初期からのファンが自慢できる文化
「あのバンドが有名になる前から応援してたんだよね」って言いたいけど、言うとウザがられる文化ありますよね笑。それをこのプラットフォームでは逆にしたい。つまり初期のファンはがんがん自慢しようよ、という文化をプラットフォーム内につくる。ぶっちゃけ自分の作品がいいって自分で言いにくいですよね笑(私は言いますが)。なので作家としては、ファンが「この作品はいいよ」って言ってくれるとありがたい。ファンコメントみたいなのをいっぱい入れるとポイントがたまって、それが作品購入時に還元される仕組み。応援の声を上げる人がちょっとでも得になるようにですね。お金があればポイって買えばいいですが、余裕はないけど、作品は欲しい!という人にとっては、通勤時間に毎日コメントを入れることで作品が安く買えるようになる。スパムみたいになると問題なので、そこは考えないといけないかもしれないですが。また、人から「すごい、これ好きー!」って言われることって、つづける原動力にすごくなります^^
あとは「これを見ている人はこの作品も好きかも」の誘導ができるといいかなと。ファンがほかに流れちゃうって思いますかね?私はそうは思わないんですよ。Youtubeとかでよくやってるけど、両方好き、になるだけじゃないですか? そう考えると、ファンにとってもアーティストにとっても、知りあえる関係が増えるのはありがたいこと。同時に、ファン同士の交流が生まれるとより盛り上がるかも。同じものが好きな人たちなわけだから。私は昔、バスケが好きでよく見に行ってましたが、同じチームファンの友だちと試合を見に行くのは本当に楽しかった。ファン同士の交流があって根付いてくると、意外とバスケ界とか業界のことまで考え始めたりする(何ができるわけではないんですが笑)。
3.最低価格を楽しむ
現代アートを真面目にやってる人はみなさんご存知かと思いますが、現段階でいくらで売れてる、○○っていう賞を獲ってる、有名ギャラリーで展示した、っていうのは、ほとんど意味がない話なんですね。というのは歴史が証明しています。ウォーホルの名前を知ってる人は多いはずですが、ウォーホルと同時代の作家の名前ってどれだけ知られてますかね?ウォーホルが亡くなったのは1987年。58歳なのでかなり若いですね。現在90歳の草間彌生さんが同世代作家ですが、同世代の作家だって何万人といたはずなんですよね。キミコ・パワーズさんの著作にもありましたが、著名なギャラリーで扱われていたけど、すでに消えてしまった人もいると。そういった歴史の長い流れから考えると、現在100万円で売れましたーみたいなのは、ほんとに点でしかない話なんですよね。ほとんどの作家が100年後、いや50年後には残っていない。ぶっちゃけ話、アーティストのCVなんて9割が盛ってるもんですし笑。みんなその辺が分かってるせいか、現在どれほど売れてても見下してくるようなアーティストはいないです。技術的に分からないことがあれば教えてくれるし、日本のレジデンスや文化について聞きたいっていう人は聞いてくれるし、アーティスト同士で対等に意見交換ができるのは楽しいです^^。世代とかも関係ないしね。アーティストになってよかったのは、こういう対等の仲間にスカーっと入れちゃうこと。私はアーティストから解説聞くのが大好きなので、話すたびに発見があってそれも楽しいです。
でも、価格や賞って傍からみてすごい気がしちゃいますよね。なので、売れた作品の価格を表記しない、トップページではその作家の作品のうち、「最低価格のもの」を表示する、というのはどうかな、と考えています。人間の心理的に、高いほうがいいもの、みたいな気がしちゃうんですが、宝石みたいな価値が一般化してるものはともかく、現代アートでそれをやっちゃうと偏見を増長させちゃう可能性があるからですね。簡単に言うと、あんまり知識がない人が騙されちゃうんじゃないかと。まぁ、好きで買ったからいいって言うならいいですが、現代アートとして価値があるんだよ、だから100万円ですって言われて買ったものが、実は全然「現代アートとしては」価値がなかったみたいなことになると悲しくないですか? 他者がつけた「価値」に振り回されちゃってますよね。そこで最低価格表記。これだと、価格による作家の価値づけが分かりにくくなるので、高い=良いという偏見を育てないんじゃないかなと。村上隆さんの名言をここで引用。
芸術家の本懐は、「作品」が後世に残り、感動を未来人に与えることです。赤貧と無名と無理解に悩んだ作家が、たった一枚の「作品」を残す。そのたったひとつの奇跡のような珠玉の「作品」によって復活してくることがあります。
「好きなことをやって食べていきたい」「職業作家になりたい」そういうことを考えるのなら芸術家になるのはあきらめた方がいい。なぜなら、貧困も無名も作品の輝きとは無関係だからです。
1センチくらいの作品で100円、みたいなのは、誰でもやろうと思えばできるはずです。「価格を安くするのはちょっとー」みたいなことを言いたがる人に言いたいですが、2017年のアーモリーショーには、アートの1ドル自販機みたいなのが出展されてましたからね笑。ちなみに日本人作家です。価格を気にするのではなく、価値を揺さぶることを我々は考えないといけない。もっといえば、自然に生きることが価値を揺さぶってる状態になってないといけない。
作品の価格付けについて、私も昔は悩んでいましたが、あるコレクターさんのアドバイスにより、意図的に安くつけるように心がけるようになりました。もちろん、送料や画材代で赤字にはならないようには考えています。「安くたくさんの人に持ってもらえるよう考えなさい」というアドバイスだったのですが、安くといってもご本人が大金持ちなので、せいぜい1万円くらいかなと思ってたら、ポストカードサイズくらいで500円とかだと。いやびっくり、ホントに安かった。その代わり、その方が買う時はまとめて買ってくれる。どうやらそれを他のアートコレクター友達に配ったりしてくれてるようでしたね。小さくても1点持っていることで、その作家のことがずっと気になるようになるそうです。そうしてその作家を応援するファンの1人になってくれる、そういう人を増やしていけというアドバイスだと私は考えました。現代アーティストは消えやすい。価格安く売れるうちになるべく多くの人に持ってもらえるようにして、作品を愛する人を増やすことで、長く生きられるということ。作品を愛してくれたたった1人が、自分を歴史の先まで押し上げるみたいな魔法の展開もあるのかもしれませんが、私には分かりません。
こちらの1ドル自販機は人数制限があって私は買えませんでしたが、長蛇の列ができてました。アーモリーに出してる作品が1ドルってなかなかないですからね笑。どんな作品が出てたのかは分かりませんが、この行為と列自体が1つのアートとして成り立ってるなと思ったのでした。ちなみに草間彌生さんも美術館展示の時にボール彫刻を1点2ドルとかで売って怒られたエピソードをおもちだったような。
polcaというフレンドファンディングアプリを使ってて思うのですが、300円くらいだと見知らぬ人にでも気軽に払えちゃうんですよね。500円だとなんか高い気がしちゃうけど。この200円の壁はなんだって気がしますが。思ったより安い!と感じ、アートとか買ってみちゃおうかなーみたいな人が増えてくれれば、既製品よりも一点物を素敵と思う文化が根付くんじゃないかなーと。だってさ、普通に「製品としての」クオリティだけ考えたら、雑貨買うほうがちゃんとしてるよ?笑。そんな中、アートがいいなって思うのであれば、既製品にはないストーリーやオリジナリティをそばに置きたいということですから。
まぁ、ここまで書きましたが、たぶんあんまりうまくいかないだろうなっと予測するのは、日本でアートを買う人とアートを見る人ってけっこう違うんですよね。海外だと誕プレがフェアで買った30ドルの絵画みたいなこともあるし、自分の家をアートで飾る文化がもっと一般的にある。だから飾り方がうまいですよね、どこのおうちも。日本でまっとうにやるなら、現代アートをおもしろく解説してくれる人気ユーチューバーが出てくれるとか、現代アーティスト同士のトークバトルが開催されてユーザー投票によって勝ち負けが決まるとか、プラットフォームのおもしろさがないと、新規のプラットフォームにわざわざ人が集まらない気がしますね。なぜなら、オンラインの現代アートギャラリーとしてすでにタグボートがあるからです。作品を見に行くならそちらで十分。
現在のタグボートにない機能を追加するんだとすると「この作家も好きかも」機能をつけるとか、取り扱い作家をSNS連動して、作家のリアルタイムの動きを見せる(valuっぽくなりそうではある)とかですかねー。アート関係者の第三者からの推薦コメントとかが入るとさらにいいのかも。購入者した人からのファンコメントが入ってると、次の人が安心して買いやすいっていうのもあるかもしれないですね。
ここまで書いてみて、日本には「現代アート」のおもしろさを伝える人の数が圧倒的に足りてないのかも、という気がしてきました。アーティストのプラットフォームより、現代アートのおもしろさを伝える人たちのプラットフォームがあったほうがおもしろそう。次はこの辺を考えてみます。
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みじんこは、伝えちゃうよ!ヽ(=´▽`=)ノ