ブラジルほのぼの話がつづいてますが、今日はまじめにアートの話を。ブラジルの美大の先生に教わったシリーズです。美術史とかまじめにやるとこんなに知識あるのかーって驚くばかり。実際にレジデンスで出会うアーティストさんと話すとみんなほんとに詳しいんですよね。
ってことは詳しいだけではダメなんですが、知ってるかどうかって大きな差があるわぁって思っております。
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1)リレーショナルアート
今回は90年代から現在までのアートの大きな動きです。細かくはあるけど分類分けされてるようなものですね。まずはリレーショナルアートから。こちらは、フランスの美術評論家Nicolas Bourriaudによって提唱されたアートの傾向です。フェリックス・ゴンザレス・トレスの飴の彫刻が有名ですが、これ消費によって形状が変わる彫刻を表しているのかと思ったら、HIVで死んだトレスのパートナーの体重が関与していたみたいですね。病気のために体重が日々減少することと飴が人に持ち去られて減っていくことが同期していたようです。しらなかった、、
✓ 参考リンク リレーショナル・アート フェリックス・ゴンザレス・トレス / ゲイやエイズ体験を反映したミニマルアート
2)コンフェッショナルアート
英語だとconfessional artなので「白状する」という意味ですね。作家の非常にプライベートな思い出を作品として吐露したものになります。Tracey EminのMy bedは鬱でずっと寝込んでいた自分のベッドがそのまま作品になっています。多かれ少なかれ、作品って作家のプライベートを含むと思うのですが、作品そのものが本当に使ってた何かなので、個人史の暴露になりますね。
自分の作品だと海外でのアート活動を始めてから一緒に旅をつづけている赤い靴はコンフェッショナルアートに近いかもしれないですね。ただ、コンフェッショナルアートの場合は、もっと本人にとっての強烈な体験を宿した物質なのかなというイメージです。
✓ 参考リンク CONFESSIONAL ART(Tracey EminのMy bedの紹介ページ)
3)アイデンティティアート
次はアイデンティティアート。ちょっと参考リンクが見つからなかったのですが、先住民の作品など、自分のルーツと関連したアートがこれ。
4)シチュエーションアート
イベントやなんらかの状況と関連したアートがシチュエーションアート(まんまや!)。具体例としてはThe Yes Men。Yes menというタイトルなんですが、大ウソつきグループなんですね。なんか国連で着ぐるみ着よう!みたいな答弁がされたっぽいビデオをつくって配信したり、それっぽいウソのニュースを流している人たちです。これらのウソによって真実を暴く、というのが彼らのステートメントです。
holiday in #CapeTown keeps getting disrupted by #ZombieNats — um, doesn't this city have a contingency for #zombieoutbreak? #NatsNeverDie @natsneverdie @CapeTown @capetownmag @SouthAfrica pic.twitter.com/HbV6827Aaw
— The Yes Men (@theyesmen) September 26, 2019
✓ 参考リンク The Yes Men(Wikipedia)
5)Institutional Critique(体制批判)
アートの批評という作品。もはや批評なんですが、アイデアだけのもので代表的なのがアンドレア・フレイザー。2003年のビデオパフォーマンスでは、作品購入した個人コレクターとニューヨークのホテルの一室で「芸術作品をつくるためのセクシャルな出会い」を行ったことでも有名。
✓ 参考リンク アンドレア・フレイザー(Wikipedia)
6)Transnationality(トランスナショナリティ)
こちらも参考リンクは見つかりませんでしたが、近年のアーティストの傾向として、生まれ育った国を離れ、越境して活動するアーティストが増えているとのこと。これ、実は近年に限ったことでもないかなーって思うんですよね。移動がしやすくなったので加速してきたけども、昔はパリなど芸術の中心地と呼ばれるような場所にアーティストが集ってましたよね。
これに関してはとても興味深い話があって、都市が言葉を発しているというもの。ポール・グレアム「都市と野心」という本に書かれているようですが、丁寧に翻訳してくれてるサイトがあったので、こちらをどーぞ。分かりやすいです。
✓ 参考リンク ポール・グレアム「都市と野心」
昔は自分のアイデンティティである生まれ育った国の文化のコンテクストを踏まえて打ち出すみたいなのが定石なとこあったと思うんですよね。あるいは個人史。ただこれ、日本人だからといって必ずしも日本がアイデンティティとは限らないんじゃないかとも思ってるんですよね。たとえばトランスジェンダーっていう言葉がありますが、生まれ持った体が自分のアイデンティティとは限らない人もいるわけです。
私は初めてブラジルのエルネスト・ネトさんなどの作品、ネオコンクリティスムについて知った時、とても自分に近いと感じました。実際に、ブラジルの先住民の考えは陰陽思想にもつながるし、かなりアジアの思想に近いところがあります。日本がアートを新しく始めるのに適した環境かといえば、少なくとも自分にとってはそうではなかった。適していればもっと海外のアーティストは日本に住むだろうし、今でも多くのアーティストがニューヨークに行ってしまうのは、そっちのほうがアートをやるのに適した環境があるということを示してるんじゃないのっていう気がするんですよね。
環境が自分の力を倍加したり低下させたりすることは確かだとしたら、自分はどこにいるべきかというのを今はちょっと考えています。あるいはやはり、移動し続けるかもしれない。
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