2017年11月~2018年5月まで上海のSwatch Art Peace Hotelでアーティスト・イン・レジデンスに参加していたOuma。本来は制作アトリエのみの提供で、展示機会などはなかったはずでした。しかし、ありがたいことに2018年1月にはSwatchの35周年イベントで招待者限定ですが作品発表する機会があり、それが次のチャンスに繋がりました。またご紹介いただいた上海のギャラリーさんで展覧会をする機会があり、多くの人に作品を見ていただくことができました。
非常に多くの貴重な出会いをいただいた上海。この町で出会ったギャラリーオーナーさんたちから話を伺い、ここ数年の中国のアート事情をまとめました。
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1)新人アーティストにチャンスが多い
北京を抜いて中国で最もアートが活発な都市となってきた上海。West Bundと呼ばれるエリアには、日本のオオタファインアーツや韓国のArarioなど有名ギャラリーも。以前はM50と呼ばれるエリアにギャラリーが集まっていましたが、こちらはもっと観光化、商業化され、上海アートの中心は現在、West Bundに移ってきています。また、フレンチコンセッションと呼ばれるエリア(駅でいうと常熟路駅周辺)にも良いギャラリーや美術館が集まってきています。
美術館やギャラリーが増えてきているということは、新人アーティストの発掘も盛んに行われているということ。同時に大型の美術館では興味深い展覧会の企画も求められています。ニューヨーク、ロサンゼルス、あるいはヨーロッパ各地では、すでにアーティストは飽和状態で、新人がいきなり行ってギャラリーめぐりをしても、現地在住でない限りはなかなかチャンスを手にすることが難しいです。(私は実際にNYC、LAでギャラリーめぐり、メール送付はしたことがあります)
また、中国にはプライベート美術館も多く、そういうところでは意外と展覧会の計画が余裕をもってなされて「いない」んですね(通常、美術館の企画は2年前には決まっている)。私がグループ展に参加させてもらった中国の成都藍頂美術館では、オファーをいただいたのが展示期間の1か月前。ウェブサイトに情報が公開されたり、メディアニュースになったのは、開催のほぼ前日。しかしそれでも、オープニング当日にはかなりの数のメディアやお客さんが来ていました(現地では有名な美術館です)。
ということはつまり、「いきなり声がかかることがある」ということなのです。1か月後の展覧会に参加してみない?と声がかかることがある。これは新人にとっては大きなチャンスです。美術館展示でも2年待たなくていい。
✓ 参考リンク 蓝顶举办“若葉集-日本青年艺术家群展”(成都藍頂美術館)
さらに興味深かったのは、プライベート美術館では作品が販売できるんですね。美術館という名前にはなっていますが、大型のギャラリーのような感じ。私立美術館の運営費はこうした作品販売やポストカードなどのグッズ販売も合わせて賄われているようです。
2)アジア人フレンドリー
上海で特に感じたのは、日本人に非常にフレンドリーだということ。アート関係者に限らず、一般の方でも日本好き!日本語勉強してる!という方に頻繁に会う機会がありました。上海で仕事をしていた友人が言っていましたが、アジアはやはりアジア人にフレンドリーだと。ちなみに、中国人コレクターは、たとえニューヨークに住んでいても中国人アーティストの作品を好んで買うようです。
また、あるギャラリストに言わせると、中国人作家の作品よりも日本人作家の作品のほうが繊細で仕事が丁寧なことが多いとのことでした(アートの価値がどちらのほうが高いというわけではなく。ただ、仕事が丁寧だとギャラリストしてはコレクターを説得しやすいのかもしれません)
3)ヌードや政治的なメッセージの含まれる作品に制限あり
ここ数年の中国の流れですが、ヌードやセミヌードの作品の発表が制限され始めているようです。大きなアートフェア―では、事前に政府に発表作品のリストを出し、許可が出たものしか発表ができません。横を向いた裸のおしりのみの画像とかはNGになったことがあるようですよ。
この作品は中国での発表がNGとなりましたが、紙で覆い隠せばOKとなったそうで、作品をサンドイッチするように両サイドが別の作品で覆われています。この「隠されている」という行為によってむしろ政治的なメッセージが強まっていますが、実のところ判断する側がアートの専門家ではないので、「隠してあるならいっか」ということになってしまうよう。
ギャラリーでの展覧会などの規制はまちまちですが、今後は発表の機会があるようならすべて検閲がかかるようになってくるかもしれません。
✓ 合わせて読みたい 現代アートについて考える~初心者の第一歩から海外展開まで役立ち記事まとめ
チャンスを引き連れてきてくれるのは「作品」、ただそれだけ。今、創り続けているのにどこからも声がかからないのであればまず、自作の強度を見直すこと。いい作品は必ず、誰かから声がかかります。そして「いい作品」は一点あるだけではダメ。目に留まったら必ず、「他のを見せて」と言われます。時系列に全部見せるのではなく、見せる時は最も強度のある作品から見せていく。その時の相手の反応で、自分の現在の立ち位置も分かるものです^^