2017年10月、ついにフィンランドでアートのワークショップを実行できました!3~6月にもフィンランドのトゥルクに滞在していたんですが、その時は声をかけてもうまくいかなかった。でも、今回は、美術館のスタッフの人や現地の学校で働くアートの先生が協力してくれ、すごくたくさんの子どもたちに参加してもらうことができました。
今日はフィンランドと日本の学校の違いや、ワークショップの様子をご紹介です!
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SORA(ソラ)プロジェクトとは?
今回行ったのは、私が2013年から継続して病院や施設、学校などさまざまな場所で行っているアートプロジェクト、SORAのワークショップです。下絵の線が描いてある紙に絵を描いてもらい、終わった後につなげると全部の絵がつながって1つの作品になるというものです。SORAの名前は「空」から。線をつなげていくアイデアはシュールレアリストたちの間で流行った遊び「甘美な死骸」からきています。これは長い紙を4つ折りにして、それぞれの面を違うアーティストが描き、終わってから広げると予想もつかない作品になっているという遊びです。
SORAプロジェクトは2017年10月現在、11カ国から1757枚の絵を集めており、並べると高さ2.1メートル、横幅52メートルにもなっています。いつか、大きな美術館でこちらを全部一度に見上げられるように展示するのが私の夢です。
余談ですが、日本語のローマ字表記で「SORA」としてしまったんですが、「ソラ」の発音どおりだと、本来の表記はSOLAなんですよね。おかげで海外でよく「SOLAなのかSORA」なのかと聞かれます(笑)
今回はフィンランドの「Vilppulan yhteiskoulu」という学校で7、8、9年生の3学年を受け持ちました。9年生は欠席が1人で13人、8年生も欠席1人で6人。7年生は15人とアシスタントの先生合わせて16人が参加してくれました!9年生が14~15歳。ちょうど日本でいうと中学生ですね。しかし、大人びていた!(*´▽`*)
✓ 参考リンク SORAプロジェクト
フィンランドと日本の学校の違いは何が違うの?
美術のクラスに参加させてもらったのですが、通常、美術の時間は2コマ連続授業で、45分授業×2(間に休憩が入る)。これを3学年分行わせてもらいました。
学校システムの違い
フィンランドの小中学校はほとんどが公立校で、私立というのは特殊教育を行うものしかないようです。学校には給食があり、先生も一緒に同じ部屋で食べます。伺ったのは小さい学校だったせいか、全生徒がいっぺんに食事できそうでした。メニューは毎月の献立が決まっていますが、2017年は独立100周年なので、週に1回は独立記念っぽいごはんが出るみたい(なんだろう、気になる笑)。
日本では教育カリキュラムがかなりしっかり決まっているので、公立の学校の授業を振り返るのはかなり大変です。私も一度、小学校でSORAプロジェクトのワークショップをさせてもらったことがあるのですが、アートの時間に振り替えする感じで調整してもらいました。フィンランドでは教育要綱みたいなのもあるみたいですが、基本的には先生の裁量に任されていて、割とフレキシブルに対応できるようです。なので、私のように飛び込みの授業が可能なんですね。ニューヨークの私立小学校もそんな感じで割り込みさせてもらいました。
それにしても、中学生の子たちの英語力がすでに私の英語を超えているのにはもう驚き;つД`)
フィンランドではかなり小さい頃から英語教育を進めているので、若い人たちはほとんど、かなりきれいな英語をネイティブばりに話せます。「みんなすごすぎる」という話をしたら、あるフィンランド人さんは、「世界にフィンランド語を話す人はほとんどいないから」って言ってました。世界人口が70億だとすると、まぁ確かに日本人は1/70以上。フィンランド人は550万人なので、1/1000にも満たない。しかしそれにしてもすごいです;つД`)ウラヤマシイ
ちなみにフィンランドではお酒は18歳から。度数22%以上のものは20歳以上からとなっています(2017年現在)。髪の毛を染めてる子やメイクやマニキュアをしている子がけっこういたので、そういうのは厳しくないみたいですね。
✓ 参考リンク フィンランドで人気のお酒と、販売に関するルール
フィンランドとルーマニアの子どもたちの「絵」の違い
私はこれまでにも海外で何度かワークショップをやっていますが、二度同じ場所に行けたことは今のところ一度もありません。同じ人に二度会うことはできないのだと私は思っている。だからこそ、この一度の出会いの中で、どれだけのことを残せるだろうと考えるのです。私のことも作品のことも忘れていいから、何か小さな変化を残せたらいい、そう思うのです。
そこで今回は、アートを使って思考力を鍛えるVTS(ビジュアル・シンキング・ストラテジーズ)のことを伝えようと考えていました。
✓ 参考リンク 子どもの学力を伸ばす美術鑑賞法~思考力を鍛えるVTS(ビジュアル・シンキング・ストラテジーズ)
他の国の絵との違いを考えてもらう
事前に英語の話し方など練習して準備していたのですが、最初のクラスの子は制作に時間がかかっており、2コマ授業のほぼめいっぱいまで時間を使って絵を描いていました。そこで予定を変更。残り15分だけを使い、「ルーマニアで描かれた絵と自分たちの絵との違い」を考え、意見を出してもらいました。
↑授業ではルーマニアから持参した絵を前に制作してもらいました。
枠からはみ出さないフィンランド、枠を気にしないルーマニア
もともとシャイだと聞いていたフィンランドの学生さんたちですが、なんかある?と聞くと(ルーマニアのほうが)「青が多い」「色が鮮やか」などの意見を出してくれました。ルーマニアでの制作は小さい子供から大人まで年齢はさまざま。あとは用意した画材がアクリル絵の具チューブだった、などの違いがありました。しかし、このクラスとの大きな違いは、「枠をはみ出すかはみ出さないか」でした。
ルーマニアの絵ではそもそも線を完全に無視して絵の具をてんこもりした子もいたにも関わらず、このクラスでは誰一人枠に色を重ねて消すようなことはしなかったのです。線を増やした子はいたんですけどね。ここまで線をはみ出さずにきっちり中に描かれることは今までなかったので、非常に興味深かったです。
これについて先生は、小さい子向けのフィンランドのアートの授業では、線に沿って色をつけるようなものがあるので、それに慣れているせいかもしれない、とおっしゃってました。フィンランドで使われた画材は主に(固形のを溶かすタイプの)透明水彩、ペン、鉛筆なので、はみ出しにくい画材だった影響もあるかもしれませんね。
ちなみに、次のクラスでは線を無視して紙の真ん中に大きく絵を描いた子もいました^^
「枠」について考える
「誰一人、線からはみ出さなかったんだよ。ルーマニアの絵を見て。すごくはみ出してるのがあるね。ルーマニアはゆるーい国なんだ。約束しても約束の時間に連絡なしで来ない、みたいなこともいっぱいある。だからホントに困るんだ、日本人はちゃんとしてるから(笑)でもこうして違いを知ると、どっちでも選べるようになるよね。違いを知るっていうのは可能性を知るってことなんだよ」というのを最初のクラスでは話しました。生徒さんからは「最近ではそこまで厳密でもなくなってる」という声も上がったところで授業は終了。枠をはみ出すことのいい悪いではなく、枠をはみ出さないこともできるし、枠をはみ出すこともできる。伝えたかったのはあくまで「可能性」
ちなみに、このやりとりは全部英語。フィンランドの中学生、超すごくない?;つД`)
この後の給食の時間に、先生と話をしました。フィンランド人と日本人は保守的なところが似てる、などと言われてますが、フィンランドの自殺率も高いそうです。Wikiに国の自殺率順リストというのがありましたが、それによると2015年は日本が18位で19.7人/10万人、フィンランドは28位で16.3人/10万人でした。ちょっと古い記事ですが、「男女の自殺率格差問題が深刻なフィンランド」という記事も。フィンランドは男女の自殺率格差が激しい国としても知られていたようです。
フィンランドに関しては北部に行けば行くほど、冬の夜が長く、ほとんど日が出てる時間がなくなります。マンッタでも真冬は4時間くらいしか日が出ておらず、学校に行く時には暗く、授業が終わって帰る時にはすでに暗いので、明るい時間に外にいられない、という話も聞きました。やっぱり、日が出ていないのが原因なんじゃないか、と思いきや。こちらの記事「フィンランド、「自殺大国」の汚名を返上」には、「一般的に考えられている日照不足は自殺との関連性がないとしてこれを退けた。」という一文も。
同緯度のノルウェーの自殺率が64位10.9人/10万人(2015年)なことを考えると、日照時間だけの問題でもなさそうですね。
✓ 参考リンク 国の自殺率順リスト 男女の自殺率格差問題が深刻なフィンランド フィンランド、「自殺大国」の汚名を返上
日本が大好き!な2クラスめ
さて、6人と少人数制になった2クラスめ。女の子数人はアニメが大好きなようで、日本人が来るっていうだけで大喜びしてくれてたよう。私は彼女たちに「Fake Mom」認定されました^^
↑トトロの絵が美術室にありました^^
制作中は小さく曲を流しているのですが、このクラスでは女の子たちのおススメで日本のアニソンが流れ。途中から先生に「J-POPで有名なのは?」と聞かれたのでRADWIMPSを勧めたところ、授業中ずっと流しててくれました^^(RADWIMPSってJ-POPでいいのかな?)
最初の学年と違い、かなり描くのが早く、1コマでほとんどの子が描き終えてしまったので、この授業では「子どもの名前を漢字で書く」と「折り紙」を。
名前を漢字で書く、というのは海外でよくやるのですが、大人も子どもも喜んでくれるので交流したい時にはおススメです^^
折り鶴が1人の男の子を変えるまで
最後の授業、7年生は人数も多いですが、ティーンネイジャーらしく暴れん坊も多いようで。このクラスにだけはアシスタントの先生がつき、授業を一緒に見守ります。さっそく机にいたずら書きをし始める少年。別の子は「描けない!」と言いながらペンをバンバン投げ始めます。なんか自分の中学校時代に、生徒がみんな騒ぎ出して学級崩壊してたのを思い出しましたよ( ゚Д゚)
しかし、尻尾をひっぱると羽がパタパタする折り鶴を見せたら、子どもたちの目の輝きが!(*´▽`*)キラーン
つくり終わって、最初に羽を引っ張って動かすところが結構難しいので、そこだけ預かり「Ready to fly?」と聞いて子どもが「Yes」と言ったらパタパタ動かす。他の子の輪に入らず、黙々と絵を描いてた子も、この瞬間だけはふわっと笑顔を見せてくれます。
3クラスめは大人数だったので、先生にも手伝ってもらってみんなで折り鶴作り。これまで他の国でも教えてきた中では、全然折りたがらず、すぐ分かんないーって言い出す子もいました。そんな中、最初にペンを投げまくって苛立ってた子がものすごくハマり、なんとか自分で折り方を覚えようと、何度も何度も新しく折り直してたんです;つД`)ムネアツ!途中で分からなくなるたびに聞きに来るのですが、確実にステップアップしてる(*´▽`*)!
最終的に、残ってた折り紙を全部、彼にプレゼントしたところ、目をめっちゃ丸くして喜んでました。
私はこういう不公平な配り方をよくやります。ルーマニアでも一人だけ時間をかけて翌日まで絵を描いてた子に、ロール和紙をプレゼントしてきました。均等に配ったところで、興味のない子に渡った折り紙は捨てられるだけです。あるいはやりたくもないことを与えられてプレッシャーを感じるだけ。興味があることを伸ばせるように、興味があることにチャンスが降ってほしいというのが私の考えです。もちろん、全員の興味のあることは探してあげられない。私ができるのは、私が気づいた範囲のことだけです。
折り鶴は難しいかも、という話を聞いてたので、最初は紙飛行機にしようかと思いましたが、フィンランドでは紙飛行機を授業でつくることもよくあるそうです。ルーマニアでは紙飛行機も珍しかったので、みんなでつくって飛ばしっこしたら大喜びだったんですが^^
今回、改めて感じた折り紙の最強さ^^
日本からわざわざルーマニアまで、きれいな和紙やキティちゃんやくまもんのキャラモノ折り紙を差し入れてくださった方がいまして。質感のよい和紙のほか、2クラスめの女の子たちには、くまもんが超人気で「このキャラ知ってる!」と大喜びでした^^いつもありがとうございます。
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みじんこは、アートを通じて違いを知りたいです!ヽ(=´▽`=)ノ