先日、作品についてじっくりお話しを伺うことができた高瀬きぼりおさん。話をしてても楽しかったし、発見も多かったので、改めてこちらに紹介させていただきます。
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キャンバスに絵の具を塗る、高瀬きぼりおさんの作品
✓ 参考リンク 高須きぼりおホームページ
ほぼできあがり状態の作品写真からご紹介なんですが、まぁまず、これはなんだろう、と。
現代アートの作品は基本的には「作品本体+哲学」ででき上がっています。私は目利きではないし、自分も現代アーティストとして研鑽を積んでいるところなので、作者がいる時にはなるべく丁寧に疑問を聞きまくることにしています。
まず、こちらのつくり方ですが、こんな感じなんです。
オリジナル作品のペイント位置を座標数値化。この日はライブ制作されていたのですが、オリジナルを拡大して制作。作品の座標をキャンバスに書いてからストロークを入れていく。こんな手順で作品を創られていました。
オリジナルの失われた複製品
気になったのは、座標を写しているといっても、手書きをした場合、正確に元の座標のコピー拡大にはならないだろうということ。筆の太さがあるし、座標を中心にした近いストロークができ上がるだけなんですよね。これについては「全く同じにしたいわけではない」との答えをいただきました。確かに、完全コピーならもっと他にできる方法があるはず。少し立ち止まって複製する意味やコンセプトについて考えていると、座標は「楽譜のようなもの」との言葉が。
なるほど、楽譜は設計図としてあれど、指揮者や演奏者によって奏でられる音楽はぜんぜん違うはず。ちなみに、この作品のオリジナルはすでに廃棄されているそうです。残っているのは楽譜としての座標だけ。
作品を通じて議論が起こる
現代アートの作品の良さは「その作品によってどれほど議論が起こるか」で表されることがあります。つまり、これはアートと言えるのか、みたいな議論が起こるかどうか。私はこの作品や問答を通じて、自分の中に「オリジナル」とは何か、という疑問が生まれました。オリジナル作品を作家本人が廃棄した場合、作家が創っているコピーはオリジナルなのか。例えば私がこの座標を基に作品制作したとしたら、それはオリジナルになるのか。作品の「編曲」的制作はどこまでオリジナルとして許容されるのか、どこまでが盗作になるのか。
本作では座標がスタートではなく、オリジナル作品があって、それを楽譜(座標)化し、複製をつくってる。今後、色を変えたり、素材を変えたり、座標をもとにバリエーションも生まれてくるはず。
音楽はそのライブ空間に自分がいなければ、全く同じものは味わえない瞬間芸術だなぁと私は思っていましたが、この作品は、ライブの瞬間がそのまま留められるおもしろさがあります。これをテーマに展覧会をやる時には、楽譜を中心に演奏の違いを複数の作品で表したり、楽譜自体のクオリティを上げるなど、まだまだ探求できる余地も多くありそうでしたね。
自作を見直す
私が作家と話すのが好きなのは、結局のところ、自作の見直しになるから。他の作家がどう考えてどうアプローチしているのかを知ると、自作のアイデアに繋がるんですね。
私自身も、自作を目で見たイメージで書き写しつづける自己複製するシリーズを構想していたことがあります。1年くらい、毎日自己複製し続けたとしたら、最初の作品と最後の作品はどう変わっているのか。作品(物体)を生物と定義している私としては、自己複製するという既存の生物の定義や生物の進化について日々考えています。現代は特に、データコピーや共有がしやすくなりました。また、創作物も「スピンオフ」という形式で他者の手により発展するようなことも起こってるんですよね。現在、私は自分の手で複製や進化させていますが、もっとオープンに作品を開放し、勝手に発展させるようなものをつくっていきたい、それが現在自分がテーマにしている「集合生命」という概念、私たちは複数の生命をもつという考えにも繋がっていく。また、最終的に目指している名前の放棄(コピーライトの開放)にもつながっていくと思えました。いい刺激をいただけました。
現代アートのコレクターさんたちに現代アートの魅力について聞くと、ほぼ全員が「今まで自分になかった視点に気づかされること」と言います。私たちが日々考えることの9割が同じことだという話を聞いたことがあります。良い作品はそのサイクルを断ち切って違う世界を見せてくれます。ぜひ、現代アートの作家とも話をしながら、アートのおもしろさに触れていただきたいです!
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みじんこは、「きぼりお」の名前がかわいいことが気になってます!ヽ(=´▽`=)ノ