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ALSと生きるということ~病気ではなく長所に目を向けるにはどうしたらいいのか

  • 8月 10 / 2020
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みじんこレビュー

ALSと生きるということ~病気ではなく長所に目を向けるにはどうしたらいいのか

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良著を濃縮還元してお届けするみじんこブックレビュー。今日は『ALSを生きる いつでも夢を追いかけていた』。病気の告知をされた時、ショックを受ける人が多いような気もするのですが、谷川先生はちょっと違ったようです。本を読んで学んだことを覚書メモしますね。

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ALS(筋萎縮性側索硬化症)という難病を抱えたノンフィクション作家で筑波大学名誉教授の谷川彰英先生の著作を読みました。

地名に関する書籍を多く出されている先生は、看護師さんとの交流の中で本の貸し出しなんかもしてたようです。病院内では患者は絶対的な弱者。人工呼吸器をつけている谷川先生は、看護師さんや介助者さんたちへの感謝を表そうと考えます。 苗字からその人のルーツを看護師さんに伝えるという独自のコミュニケーション方法があったのは、谷川先生の職業的な強さですね。日本人の名字のほとんどは地名に由来しているみたいです。

人間としてやっているか

入院先で扱いにくい職業は、先生や警官など、人の上に立つ立場の人だそうです。谷川先生も学校の先生なんですが、もともとの性格から、社会的身分に関係なく、人間としてやっていることを自分に問いかけ、人間としてふるまっていたそうです。
周りの人への感謝のエピソードがとてもすごいなと思うのですが、難病を抱えてしまうと、自分のことでいっぱいになる気がするんですよね。いつ死んでしまうんだろう。人に迷惑かけたくない。もっとやりたいことがあったのに。自分のことばかりに目が向いてしまいそうだし、自分だったら自分のことだけ考えて周りに当たったりしちゃいそうです。

お見舞いに来た人たちが驚く

谷川先生のお見舞いに来た人たちが一様に驚いたのが「予想以上に元気」なこと。人工呼吸器をつけていながら、谷川先生は笑顔で面会者を迎えていたようです。 ALSでは記憶力など頭脳の働きはまったく変わらないため、筆談で会話をこれまで通りに楽しめるようです。同時に、谷川先生がもともと作家だったため、「頭脳を使って仕事を続けられる」ということもよかったのかも。

友人のお医者さんからのお願い

精神科医の和田秀樹先生、認知症にかかった認知症医療の第一人者、長谷川和夫先生が谷川先生に「病気に対する世間の誤解を解いて欲しい」ということでした。 認知症になった長谷川先生は「認知症でも考えたり思ったりすることは、かなり悪くなるまでできるが、世間にはそれが知られていない」と。

合わせて読みたい  NスペPlus 認知症の第一人者が認知症になった

ほかに、聴覚障がいがあって、しゃべることがちゃんとできないと、知能まで劣っていると誤解されやすいという話も聞いたことがあります。

ALSも知能はまったく変わらずなんですよね。だから、ホーキング博士や谷川先生のように、思考を使って仕事をつづけることができる。

長所として勉強ができたり、スポーツができたり、金もうけがうまいと成功者のように言われるが、そういう人に欠点があっても目立たない。 ところが、身体障がいのように目立つ欠点だと、そればかりがクローズアップされて長所があっても身体障がい者の扱いを受ける。 パラリンピックは長所を競っているのに、障がい者のスポーツとしかみなされない。(105ページを文章を短くしながら引用)

病気や障がいがあると、そちらがフォーカスされやすい。集まったフォーカスを、うまくその人の長所に流すことができないかというのを考えました。谷川先生がALSにかかったことをきっかけに、谷川先生に興味をもち、その著作である地名の由来に興味をもつ人が増える、みたいになったら、なんかよさそうですよね。 谷川先生自身、最初になんかおかしいなと思ってから2年以上経っても記憶力や判断力に変化がないことを自覚しているようです。ALSは高齢で発症することが多いため、足元がふらついてしまうなどの初期症状を、「年だからね」と考えてしまいやすいのも発見が遅れる原因かもしれないですね。 また、珍しい難病のため、すぐに診断が難しかったのもあるかもしれません。 谷川先生自身は、重度障がい者として認定されていますが、本人は障がい者と言われてもピンとこないんだそうです。確かに人工呼吸器をつけていて声を出すことはできませんが、執筆の仕事はこれまでどおりにでき、知性にも衰えがありません。

人に対してバリアフリーであることは、人をどんな意味でも差別しないということ。(121ページ)

差別というものを考える時、意識している差別はそんなに問題ではなくて、「潜在的な差別」というものがやっかいだなぁと思っています。 2020年、ブラジルから帰って来たばかりの時、成田空港にいた小さい女の子が荷物運びをしてる黒人男性の前で「日本人に運んでもらいたいー」って言ってたのを聞いたことがありました。黒人はイヤだと。一緒にいたお母さんは気づいてなかったようなんですが、これって差別に近い発言なんじゃないかなと思ったのです。 でもたぶん、小さい子ども本人も、お母さんも気づいていないし、差別と言うよりはマジョリティの安心感の中にいたい、みたいな感じだと思うのですが、こういうのが積み重なって社会に差別っていう空気感ができるんじゃないかなと思ったのです。 自分も潜在的な差別は絶対もっていると今は考えています。気をつけ合える人間関係を自分の周りにつくらない限り、それはなかなか自分で気づかないです。海外の人や、違う職業の人、年齢の違い、性別の違い、病気があるかどうかなど、自分と違うバックグラウンドをもつ人たちと意識的に交流し、「違い」にハッとしない限り、なかなか気づけないと思うのですよね。

谷川先生とマンガ家さんとの交流

昔はマンガは子どもに悪い影響を与えるから読ませてはいけないと言われていた、というのが本書に描かれているんですが、このへんの時代背景を感じますね。谷川先生はマンガ家さんとも交流が深く、1996年には福島県いわき市で開催された東アジアマンガサミットに参加。谷川先生は「マンガと教育」というテーマでアジア各国のマンガ家さんと意見を交わしたそうです。(何を話したんですかね、とても気になります)

子どもの興味・関心10歳論

子どもの成長を辿ると、10歳になる頃に独自の興味・関心をもつようになるというのが谷川先生の教育論の一つです。 生い立ちから語られている本書ですが、信州の人にとっては「山は高いほうがいい」という感覚があるみたいです。山に囲まれて暮らしているから、山を見ないと落ち着かないのだとか。 原因が分かったことが前に進むきっかけに ALSという診断がくだると、多くの人は落胆するようですが、谷川先生は「一筋の光が自分の前に照らされた」ように周りの人に語りました。 それまで、原因不明の症状に夫婦そろって悩まされていたため、ALSという診断名がついたことで「説明がついたことですっきりした」のだそうです。

今できることを精一杯やる

外向的な性格だった先生ですが、ALSになってから病室にこもりきりとなりました。そういう生活に耐えられたのは、毎日やるべき仕事のゴール設定ができたからだろうと言います。これまで書いてきた本があり、それをさらに一つ一つ積み上げていく。 もともと、「人生に悔いなし」と言えるほど十分に生きてきたという先生は、それでも一瞬だけ、絶望感に陥ったことがあったようです。できないことが増え、やるせない思いにもなりましたが、一瞬のことですぐに元通りの楽天的な性格に戻れたよう。 先生の場合には執筆の仕事もあり、家族のサポートもあります。また乙武さんの著作を読み、できないことよりもできることを考えるほうが前向きに生きられると学んだと書かれていました。

あと、筑波技術大学という視覚と聴覚に障がいがある学生だけを受け入れている大学があるというのも興味深かったですね。

合わせて読みたい  筑波技術大学 トップページ

オープンカレッジの出し物としてミュージカルに出演することになった谷川先生は、プロデューサーの秋元康さんに「間違えてもいいから、間違えた顔をするな」と言われた言葉が心に残っていると言います。

私の人生の次のステージは間違いなくALSとのつきあいのステージである。言葉をちょっと変えれば、「闘いに負けてもいいから、負けた顔はするな」ということだろう。(241ページ)

本書を読んで、私が今後の作品展開について覚えておきたいことはこのあたり。

・長所に目を向けられないのはなぜか
・病気に対する誤解
・潜在的差別にどうやって気づけばいいか
・暮らした土地によって育つ独自の感覚がある
・一人一人の声はみんな違う

病気に対してどんな印象をもつかというのは、患者さんひとりひとり全然違います。多くの人はやっぱりショックを受けると思うんですよね。その感じたショックの中身もひとりひとり違うはず。 この人がこうだったから、あなたもこうすべきというものではないし、誰かの声が強くなることで、そうではない人の声が失われてしまってはいけないと私は思います。 感じ方が同じ部分もあれば、違う部分もある。同じ病名がついていても、同じように進行していくわけでもないです。 知る機会、話す機会が増えたらいいなっていうのを、今はぼんやりと考えています。まだまだですが、ひきつづき勉強をつづけていきますよ!
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今日も読んでいただきありがとうございました!

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