外国語の特徴について海外の人と話すのは、かなりおもしろいんですよねー。その国で育ってないと「そんな細かい分類いらんやろ!」って思うんですが、その国で育っていると「全然違うのになんで分けないんだろう。。」って感じがする。今日はそんな言語と概念のおはなし。
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物に性別があるイタリア語
先日、レストランで言語についての話をしました。イタリア語には「女性名詞」「男性名詞」があるため、すべてのモノに性別があるそう。たとえばフォークは女性(Female)、ナイフとスプーンは男性(Male)。スペイン語にも男性・女性がありますが、ドイツ語にはさらに中性名詞というのがあります。目の前の物に「これは男性」「これは女性」って次々と言えるのが聞いているとおもしろい。んでも、最近できた単語、たとえばGoogleなんかには性別はないみたいですね。
さらにイタリア語では未来を表す表現もいろいろあるそうです。可能性の高い未来、低い未来、遠い先の未来、みたいな感じで言い方が変わるみたい。日本語って時制はあまり複雑じゃないですよね。現在形、過去形くらい。文脈で未来を察するみたいな。おかげで英語を勉強し始める時には、「現在完了」「過去完了」「進行形」みたいな概念を覚えるのがなかなか大変です。
エストニア語ではUnderやOnなどの前置詞がないので、Under the tableやon the tableなどを表すために名刺の語形が変化するそうで、14種類くらいの変化形を覚える必要があるそうです。あと、エストニア語は聞いてると巻き舌発音が多い印象がありますね。
スペイン語なんかでは、女性が使う語尾、男性が使う語尾があるので、喋り言葉が自分の性別を決定づけることになります。そうなると、性別があいまいな人たちにとっては、言葉を使うことが苦しみになる部分もあるかもしれない。言葉の話とは少し違いますが、タイでは性別が18種類あることが知られています。フィンランド語にはHe(彼)、She(彼女)がなく、人という意味の言葉1つだけなんだそうですが、性別のあいまいなフィンランド人さんが「だから英語はイヤー」って言ってたことがあります。
✓ 参考リンク 性別は18種類 「LGBT」先進国タイの第一線で活躍する人たち
他の国の人と比較してておもしろいのは、日本語の音の少なさ、たぶん日本語の発音ってそうとう簡単なんですよね。フランス語と日本語は似てるからフランス人にとっては簡単なんだよーってあるフランス人が言ってたんですが、フランス語は私にとってはかなり難しかったです。同じように発音しているつもりでも、彼らにとってはぜんぜん違うようで。ミュージシャンのフランス人さんは特に、ちょっとした音の違いに厳しく、少しでも違うと理解できなくなっちゃうそうでした。(その子は冷蔵庫がジーーって音を出してると気になって会話できないことがあるくらいだった)
音と言えばおもしろいのが「ン」。日本語で「ン」と一文字で表されちゃってる言葉も、韓国語では「n」「m」「ng」に分かれています。たとえばパンの「ン/ m」とアンコの「ン/ ng」、こんにちはの「ン /n」。冷静に自分の口の動きを考えて発音してみると、微妙に形が違いますよね。意識せずに使っているので全部「ン」でいっかwってなりますが、これが全部同じ表記になってしまうことに、日本語が話せる韓国人の友人がイライラしてたことがあります。「ぜんぜん違うのになんで同じになっちゃうのー!」って思うみたいですね笑。
シニフィアンとシニフィエ
スイスの言語学者フェルディナンド・ソシュールは、概念を示す言葉をシニフィアン、言葉によって示される概念をシニフィエと名付けました。詳細は山口周さんの武器になる哲学を読んでいただきたいですが、概念を表す言葉がないと、概念自体の理解ができない、というか概念自体がないことになります。
外国語にした時に訳しにくい言葉がそんな感じで、たとえば日本語の「趣き」みたいなものはどうも英語だとしっくりきません(たぶんquaint)。逆に、英語のFancyは日本語でしっくりくる言葉がありません(たぶん気取ってる、みたいな意味合いが近い。※バイリンガルの人に聞けばもっといい言葉見つかるかもです)。最近のネットスラングでは「wwwww」と「笑」は同じ笑うだけどニュアンス違いますよね。
✓ 参考リンク 武器になる哲学(山口周)
日本語の得意分野
日本語はその特性からたぶん、時制という概念の理解が得意じゃないです。あとは複数か単数か。「古池や、蛙飛び込む水の音」という芭蕉の有名な俳句を翻訳する時、訳者が「この蛙は一体何匹なんだ!」って気にした話を聞いたことがあります。日本人的感覚からすると、一匹とか言われてなくても、ボッチャンボッチャンしてたら趣きがないやろ!って思うんですが、英語圏の人には分からない。アメリカ人の先生が言ってましたが、自動的にaや複数のsをつけてしまうので、モノと数はほとんど一体の物事なんだとか。
日本語の得意分野としては表記の多さが一つ挙げられるかなと思います。日本語って漢字以外にカタカナ、ひらがながありますから。
「きのう、すーぱーでにんじんがやすかった」
「昨日、スーパーで人参が安かった」
この2つの文はまったく意味が同じなのに、なんでわざわざ書き方を変えるんだ!とカナダ人に驚かれたことがあります。意味は同じなんですけど、たとえば「キノウ、スーパーデニンジンガヤスカッタ」って書いてあったら、なんかロボットが喋ってる感しませんか?表記の違いで微妙なニュアンスの違いがありますよね。あとは、漢字とカタカナがいい感じに混ざってると読みやすい。英語の長文がそれだけで読みにくいのは視覚的リズムがないから。日本人ってけっこう文章を視覚的に読んでるんだと私は思っています。
あとはやはりオノマトペ。オノマトペの感性は外国人が理解するのが難しいジャンルの一つ。「なんか今日ちょっと、うちの中がピリピリしてるよね」って日本語の分かるロシア人に話しかけて「ピリピリ分からない―」って言われたことがありました。
あとはものすごく特徴的なのは「自分」を表す表現の多さ。私、アタシ、俺、ぼく、オイラ、儂、おれっち、自分、拙者、それがし、ウチなど英語で「I」しかない表現が多様。さらに「俺」「オレ」「おれ」で印象が違いますよね。これだけ「I」の表現が多いと、日本はもともと自己に対する多様な価値観があるんじゃないかっていう気がします。
「るろうに剣心」という漫画で、元人斬りの剣心は自分のことを「拙者」と呼んでいるのですが、人斬りに戻る時だけ自分のことを「俺」と呼びます。これは漫画内で重要な書き分けなんですが、英語訳になった時にどうなるのかと思ってたら、ふだんは自分のことを「This one」と呼び、人斬りモードの時だけ「I」になるという書き分けがされていて非常に興味深かったです。東京喰種とかも日本語の感覚を生かした表記が多いので、逆に訳本を読んでみたい気がしますね^^
言葉があれば概念が存在する世界に自然に生きる、言葉がないと概念自体がないし、後天的に学んでもその価値がなかなか理解できない。言葉と概念の関係はなかなか興味深いです。日本で生まれ育つと、英語の現在完了と過去完了、過去形の使い分けってそんないるんって思いませんか?、そんな感じ。現代アートも割とこんな感じで、概念が分かるとおもしろいけど、概念がなく育っていると価値がよく分からないですよね。
余談ですが、上海で「上海心中」という言葉を見かけたことがあります。中国語では「上海は心の中に」みたいな意味になるようですが、日本語だと「上海で心中しよ」っぽいですよね笑。
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みじんこは、母国語がないよ!ヽ(=´▽`=)ノ