もともと獣医師だった自分は「細胞病理医」というがん細胞の診断医になりたかったです。できものに針を刺して、採れた細胞から細胞の種類を診断する仕事です。ですが、ものすごく狭き門なこともあって、結局なれずに断念しました。(2年くらい専門の先生に頼み込んで学びに行かせてもらってたのに、先生ごめんなさい)
がん細胞と作品のお話です。
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臨床病理医にはなれませんでしたが、がん細胞の美しさ、ミクロだけでなく肉眼的にも美しい姿にとても惹かれていたのは確かです。
私が「細胞アーティスト」と名乗っている「細胞」は、本当は「がん細胞」のことだったりします。ただ、「私の作品のイメージは実は『がん細胞』なんですよね!」と元気よく話した時に、「それは、、言うのやめたほうがいいね、、」って言われたことをきっかけに、言わないようになったのです。
そうか、がん細胞とか腫瘍って、他の人や今まさに苦労している人からすると、美しいとか言ってる場合ではないしな、と気づいたのですね。がん細胞のどんなところに惹かれたというと、その自由度なんです。悪性になればなるほど、規定の形を越えていろんな形になるのが、とても美しく魅力的に見えたのです。
おとなしく、ちゃんと生きようとしてた子だったので、自分にはない勝手気ままさ、予想を常に超えてくる挙動に惹かれたのかもしれません。こちらの作品はタイトルが「新生物」だったりするんですが、新生物って腫瘍のことだったりします。新生物っていう言葉にすると、なんかいい感じにニュータイプっぽいですよね。
ほかに、がん細胞と手術みたいな作品があって。それがこれなんですが。
写真だと分かりにくいのですが、これ、作品を「治療」してあるんですね。単純結紮縫合で縫われているんです。作品としてつくったモノが、あんまりよくできなくて。「このへんはいいのにな」って思う部分だけ集めて繋ぎ合わせた「良品」の集合体なのです。作品の「ダメ」な部分を腫瘍と考えて切除し、正常部分だけを集めてつなぎ合わせ、一つの作品にしたものです。なので、複数の作品の良い部分の集合体になっています。
シリーズ的にはこの子たちの発展形です。
間近で見ないとなかなか分かりませんが、傷口がとても美しかったりします。
手術の傷跡も私は割と好きで、皮膚縫合はするのも好きです。作品も傷跡を触っていただくと、「ああ、生きてるんだな」って感じがします(たぶん)。
ギャラリータグボートさんに2点出してるんですが、びっくりするほど売れてないんですね。もっと言ってしまうと、アート系の人たちに見てもらえる会みたいなのに出したら、「コラージュはうまく見えるもんなんだ」「こんなのどこにでもある」と失笑されて終わったやつです。
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もうちょっと丁寧に、どんな縫い方をしてるかくらいまで見てくれたらいいのにって思ったんですが、実際に自分が何かの創作物を見る時は、そこまで丁寧に見て考えないと思うんですよね。自分が丁寧に見て考えるのも、自分の創作物だけ。美しいかといったら、たしかに見た目が美しいわけではないです。
売れてないと自信をなくして新しいものに手を出してしまいがちなんですが、ちょっと昔の出会いを思い出し、自分の作品が好きかなっていうのを考えてみたんです。そしたらやっぱり、自分はどの作品もとても好きだなーと。作品の「良い部分」だけ切り取って集めた「良品」の集合体のはずなのに、ぜんぜんカオスで、がん細胞みたいになってしまった。
規則性を残しつつ、それでも自由に生きているところ、なにより、たぶん多くの人に嫌われてしまうと思うのに、それでもこの姿をさらしつづけられるところが、この作品の強さだなぁと思っています。また、同時にそれは私の強さでもあると。
臨床医をやめて久しいですが、それでも縫いたいという欲望もあって、一針一針、傷を治していく喜びが制作過程にありました。
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今でもつい、ちゃんとしようとしてしまう。見栄えを整えようとしてしまう。そうじゃない風に生きたかったのに。そういう自分の本性を、ちゃんと支えてくれる作品なので、私は今もとても好きです。
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今日も読んでいただきありがとうございました!塗ってる作品含むオーマ作品はギャラリータグボートさんで販売しているので、のぞいていただけると嬉しいですよ!
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みじんこは、作品が好きだよ!ヽ(=´▽`=)ノ