恒例のOuma作品解説です。上海Shunギャラリーでの展示解説は2回に分けて、まずはお気に入り作品の解説から。
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この展覧会で一番のお気に入りは「作品解説」
Short explanation in English below.
後述しますが、展覧会設計の際に一番考えることは全体のコンセプト。同時にそのコンセプトは私がアーティストとしてもっている「ステートメント」と常に一致しています。本展覧会は「美術実験室」というタイトル通り、科学的であり、実験的であることを軸としています。私自身のアーティスト・ステートメントは「癒しとなるアートの探求」であり、そのための手法として人を巻き込むインタラクティブな作品であることを常に考えています。いうなれば、私の作品は目に見える作品ではなく、「体験」あるいは「創造」なんですね。
✓ 参考リンク Shun Gallery(展覧会「美術実験室」)
ということを踏まえた上で今回の展覧会で私がもっとも気に入っている作品は「作品解説」
展覧会のコンセプト、自身のステートメントを加味し、作品解説を自らつくらないことに決めました。鉛筆を垂らし、来た人に説明を頼むスタイルです。特に上海は非常にインターナショナルな町で、今回もさまざまな国籍の人が参加してくれました。たぶん、訪れた人の半分くらいは中国語が母国語ではありません。
また私自身も英語、中国語は母国語ではありません。また、英語で説明されても分からない人、中国語で説明されても分からない人がきっといるはず。少なくとも私は、英語の長い説明文は見るだけでウンザリします笑。そこで本展では、訪れる人にこの展覧会のOuma作品の解説をお願いしたのです。
「この展覧会の説明を書いてください」を中国語、日本語、英語で事前に記載。その後、いろんな国の言葉で追記されましたが、最後の3つは私もどこの国かは分かりません。1つはルーマニア人の友人に頼んだのでルーマニア語のはず笑。
散りばめた言葉から会話が生まれる
訪れた人の中には「これ書いていいの?書きたい!」と大喜びで書いてくれた人もいて、そういう姿を見ると私は本当に幸せな気持ちになります。
「誰か助けてくれるかな?」と書いたら「何が必要なの?」というスペイン語が。
こちらは私が「lie(嘘)」と書いておいたのを、誰かが「alien(エイリアン)」に。さらにそれが「alienation(疎外感、哲学用語では「あるべき自己の本質を失った状態」)」へと変化。
賢い人だけがアートを楽しめるの?そんなことない?という問いかけに対して、誰かが「そんなことないんじゃない(I think, No)」と。
科学記号や絵を描いてくれた人も
上海語の言葉も
さらに嬉しいことに上海語の言葉も。これは中国人でも上海出身・在住でないと意味が分からないとか。そういう解説を訪れた人から教わるのも楽しいですね^^
日本的な「美」を教わる
「物の哀れ」という言葉をご存知でしょうか。展覧会を訪れた子が、私の解説を聞いて「これは物の哀れだ!」と思ったようで、日本語で書いてくれました。彼女はどこ出身かは分かりませんが、日本人ではなく、日本文化、特に「物の哀れ」という美意識が好きなんだそうです。
物の哀れというのは、平安時代の美意識の一つ。「哀」という字が使われていますが、哀しいだけでなく、さまざまな感情、さまざまな物・事の心を受け取り、深く感じ入ること。出来事を起こるがままに深く深く味わうような言葉で、すごく美しい感覚ですね。
✓ 参考リンク 本居宣長研究ノート「物の哀れ」
実は短かった鉛筆のヒモ
この説明書きには、事前に日本語、英語、中国語を散りばめていましたが、他にも紐の極端に短い鉛筆というトリックがありました。通常は「ヒモが短すぎるよ!」と言われるだけで終わるのですが。まぁアーティストがやることに意図がないわけがない。しかもこんなにあからさまに短いヒモ。
鉛筆自体はちゃんと尖っていて使える状態に。書けないのはヒモが短いというだけ。でも、ヒモは切ることもできるし、切らずに引っ掛けてあるところから抜くこともできる。ヒモが短いっていうのは、他の方法さえ知っていればそんなに大変なことではないんですよね。むしろ、他の可能性を教えてくれる尊いものだとも言える。
何か一つがうまくいかない、うまくできないだけで、自分や誰かのことをダメだと思ってしまうこと、ないですか?
My favorite works at this exhibition is “Explanation of Ouma’s work”. This exhibition concept is “Art Laboratory” and my artist statement is “Seeking alternative way of treatment”. My works are always interactive, involve viewers. Especialy I like communicate with others through art works. We are very different, different culture, language, thinking way. But still, I can communicate with them without words, no misunderstanding (because my art has no correct answer), accept any situation. Actually my real works are not things, experience of you. I’m very happy if your creativity is stimulated by playing my work or at the exhibition. Especially if you “enjoyed” the place, somebody who can’t see the work, can’t feel the texture of works, also can enjoy the field of the exhibition.
Somebody wrote Shang-hainese words on the explanation. Somebody totally enjoyed writing. Somebody who likes Japanese culture said “This is Mono no Aware”. Mono no Aware is Japanes traditional sense of beauty, accept all hearts from everything, every situation and touch deeply, with sigh of beauty.
There are some tricks at the exhibition. One of them is too short pencil to use. Even if the string is too short, we still can use it. cut the string or take off the pencil from hook. Disable sometimes teach us the other possibilities. I’d like to know that. I’d like to know everything by using the other way of communication.
I’d already given up to make art which touch to everybody by myself. That’s why I always need you to reach you guys.
✓ 合わせて読みたい 現代アートについて考える~初心者の第一歩から海外展開まで役立ち記事まとめ
次回は展覧会の設計も含めた解説をお届け、お楽しみにっ!ヽ(=´▽`=)ノ