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書家・山本尚志個展「マド」~マドから見える風景は自分自身を表す

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書家・山本尚志個展「マド」~マドから見える風景は自分自身を表す

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書家・山本尚志氏は、私が現代アートを始めようかという時に出会った初めてのアーティストだ。現代アートを始めたかったが何が良いか分からず、とにかく聞きまくった。最初に出会ったアーティストが、真摯に現代アートに向き合い続けてきた作家でよかったと心から思う。

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書家・山本尚志 個展「マド」

会期:2018年12月21日(金)~2019年1月26日(土)
閉廊日:日曜日、祝日、年末年始(12月29日〜1月6日)※1月13日(日)のみ開廊
時間:12:00~19:00
会場:(PLACE) by method
忘年会:2018年12月21日(金)19:00〜21:00
書き初め:2019年1月12日(土)15:00〜18:00
住所:150-0011 東京都渋谷区東1-3-1 カミニート#14
地図:http://goo.gl/maps/nzyvr
電話番号:03-6427-9296
URL :http://wearemethod.com/

アーティストやギャラリスト、コレクターなど美術関係者も多く訪れたオープニング会場。ケータリングが作品「マド」や、広島を意識した牡蠣やお好み焼きになっているところに、ギャラリーの愛情を感じる。

会場に某所のキュレーターさんが訪れており、山本作品について聞くことができたので、ここに紹介したい。キュレーターさんのことは、ここではQ氏とさせていただく。

山本作品との出会い

なんとデビューよりはるか前、2000年頃から作品を見て知っていたというQ氏。作品の印象が強く覚えていたが、展覧会などを訪れることがなく直接の繋がりがなかったとのこと。今回、広島のコレクターから紹介を受けた時、驚くこともなく「知ってる」という感想をもったそう。ペンのみで書いていた作品のことも見ており「これは書だ」と考えていた。Q氏の考えでは、書は墨と和紙などの素材によって成り立つわけではない、ということだ。

参考リンク  デイリー書道(ペン画の作品が多く残る)

書家の問題点

中国では書は書なのに、日本に来ると書は「書道」になってしまう。書は書のままでいい。書のままで世界で勝負できるのか、という質問には「全然できる」との答えが。井上有一は世界には書家として見られているのか、という質問には、YES。抽象表現主義だと思われていないのかとも聞いてみましたが、最初に評価をした人たちの考えもあるかもしれないが、「書」とのこと。「書道」と名前が変わることにより、具体的にどのような問題が出てくるのか。私自身は「手習い」になり、オリジナルのアートの探求にならなくなるのでは、と理解しました。

書の定義とは何か、作品を見るとは

書とはまず、言葉があること。ここで私はかつて見たこんな感じの作品を例に出し、それも書なんですか?と質問してみました。だいぶ昔に見たものなのですが、確かアーモリーか、どこかのアートフェアで見た作品です。真ん中に文字が書いてあるだけみたいな感じ。明朝体みたいなちゃんとした字で書いてあり、日の丸配置。正直どうしたらいいのか、といった気持ちになった作品。でもよく考えたら、他の作品よりずっと覚えてるんですよね。

これに対して、それが本当に文字だけなのか。逆に文字だけ、って思っているようであれば、それは見るほうが「その程度にしか見てないのか」と思ってしまう、との答え。

「マドは、マドって書いてあるとは見てないからね。マドの向こうにあるものを見ている」

現代アートは見る側の「知」がさらけ出されてしまう。だから、意見を出すことを恐れ、表面的なことだけを言う。恥をさらしたくないから。でも、もっと深く見ることができたら、あるいは見たことについて議論することができたら、その作品を通じて自分が得られるのは膨大な「知」。そこが現代アートの本当の魅力だと思う。ちなみに、展示会場の作品のうち、どれが一番良いと感じたかを聞きましたが、「何が一番」という見方はしない、とのことでした。

作家を見る時に見ること

何もかもすべて。作品、作者、見れるところは何もかも全部を見る。どうやって引き出すのか、という質問にはあらゆる方法を使って、とのことでした。作品だけでなく、ふだんの言動や行動、姿勢も見られているということ。アーティストは社会を変えていく存在。社会を変えられるのは政治家ではなくアーティスト。明確な哲学があり、そこを突きとおしていくべき。逆に言えば、アーティストだけでなくそれを推すキュレーターやギャラリストも同じ。うまいこと稼ぐことだってできるだろう。でもそこに、真の意味で人を感動させる真摯さはあるのか。


回転するマド

マドに留まらない世界

書に留まる必要がない、という山本作品。今後はコラボしてもおもしろいのでは、という意見が。コラボって何と??と思って聞いてみたら、「音楽とか」ですって。ぜんぜん違うジャンルが出てきて驚きました。山本さんは陶器とのコラボはやってるんですよね。モノにモノの名前を書くスタイルなので、モノに書くのは分かりやすいですが。今後、山本氏の中からどんな言葉が出てくるか、それによっては書の可能性をさらに変革してくれるかもしれません。

私自身の作品についても参考になる意見をいろいろいただけたのですが、それはまた後日。最後に、すごく勇気が出る言葉をもらえたので、こちらに引用しておきます。

売れることを考えているのはビジネスマンであってアーティストではない。売る目的のアーティストは認めない。有名か無名かは作品には関係ない。名前は作品を見てたまたまその人だった程度。(キャリアや知名度なんか気にせず)バンバンやっちゃえよ。

さらに山本氏の最近の言葉を。これを考えると、コンセプトがない、哲学がないというのは、見映えだけそれっぽくても現代アート作品ではないってことなんですね。

最初に発見した人間の成し遂げた仕業、すなわち絵画の歴史を塗り替えた彼の歴史的偉業こそが、現代アートなのだと考えます。(中略)そのアーティスト個人の根底にあるコンセプトこそが、その作品の正体です。(山本尚志)

参考リンク  デザインとアートの違いは何ですか?(Yamamoto Hisashi, 書家、現代アーティスト)

海外だとね、お前の意見はどうなんだと聞かれるので、キャリアとか年齢とか関係なくいくらでも意見を出せる。でも日本だと、どうしても臆しちゃう自分がいます(そうは見えないかもしれませんが笑)。知識量の違いで論破されたこともあったけど、反論もできたし、意見についておもしろい、と立ち止まってももらえたし。対等と言うには私の勉強不足が際立ちましたが、有意義な時間が過ごせました。このブログは読んでないだろうけど、貴重な時間を本当にありがとうございます!

山本作品が変える世界

最後に「マド」って書いてあったーという感想だけ言ってても目が育たないので、私なりにマドから見える世界について言葉にしておきます。

Q氏が言うように、私も良いアートは社会を変えると確信している。逆に言えば、社会を変えないアート、変えようという姿勢をもたないアートは自己満足にすぎないのだと。山本作品は、デビューよりはるか前から話を聞いてきた蓄積がある。それらを踏まえて、私はこんな見方をする。
この作品が現代アートとして羽ばたいていった時、書の世界がもっと自由になる。好きな言葉を好きに書けるようになる。小学校の新年の書初めで、皆でそろって「希望の光」と書く必要がなくなる。「書は万人の芸術である」井上有一が遺した言葉どおりの社会が実現する。技巧を見せびらかす必要がなくなり、書が真に自由になる。書のルールが破壊され、檻から出た自由な作品が社会に溢れ出すようになる。そんな風景が、マド越しに私には見える。これほど開かれた未来を希望とともに伝えてくれる書を、私は知らない。

作品問い合わせはこちら  ユミコチバアソシエイツ

山本尚志 個展「マド」

12月21日(金)~1月26日(土)の期間、(PLACE) by methodにて、書家の山本尚志による企画展「マド」を開催いたします。幼い頃より書に親しんできた山本尚志は、大学で書道を学ぶなか井上有一の作品と出会い、その後、美術評論家の海上雅臣氏をはじめとする様々な人々との交流を通して、自らの書のスタイルについて模索してきました。
現在、書家であり、また現代アートの作家として活動している山本尚志は、「書の本質とは何か?それは、そこにある作品が生き生きとしているか、していないか。それだけだと思う」と語るように、モチーフ(文字)そのものの持つ意味性よりも、そのモチーフ(文字)がどのように表現されているのか、作品それ自体が生き生きとしているのかしていないのか、面白いのか面白くないのかにひたすら拘り、一貫した姿勢で作品制作を続けています。
今回の企画展「マド」では、遥か彼方の夜空に浮かぶ “宇宙ステーション” をモチーフとした作品の展示・販売を行います。“宇宙ステーション” の母体部分から伸びる、一つ一つの部屋の窓枠の中に書かれた「マド」の文字。モノにモノの名前を書く、という独自のスタイルを確立した山本尚志の世界をお楽しみ下さい。
1月12日(土)15:00からは、書き初めのワークショップを開催。

合わせて読みたい  書家・山本尚志氏へのインタビュー「第1回/書家が現代アートの舞台に立つ上でやるべきこと(前編)」  書家・山本尚志氏へのインタビュー「第2回/書家の強みと日ごろ意識すべき具体的なトレーニング(前編)」 アートは人の人生を変えるのか~20歳で井上有一作品(80万)を購入した書家・山本尚志氏の歩み

書家・山本尚志 個展「マド」

会期:2018年12月21日(金)~2019年1月26日(土)
閉廊日:日曜日、祝日、年末年始(12月29日〜1月6日)※1月13日(日)のみ開廊
時間:12:00~19:00
会場:(PLACE) by method
忘年会:2018年12月21日(金)19:00〜21:00
書き初め:2019年1月12日(土)15:00〜18:00
住所:150-0011 東京都渋谷区東1-3-1 カミニート#14
地図:http://goo.gl/maps/nzyvr
電話番号:03-6427-9296
URL :http://wearemethod.com/

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