日韓関係が着々と悪化する中(2019年7月現在)、韓国大田(テジョン)で韓国人さんたちの税金によって個展を開催しようとしています、こんにちは。地元の高校生とアートのワークショップを行ったことがきっかけで、展覧会内容をちょっと修正しようと考えています。企画についてご紹介。
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SORAプロジェクトの展示企画について
SORAプロジェクトというのは、私が2013年から継続して行っているアートプロジェクトで、世界中の人から絵を集めて1つの巨大な作品をつくるというものです。すでに16カ国から2000枚以上の絵を集めていて、並べると幅65メートル、高さ2メートルくらいになっています。このプロジェクトをやる時、絵を描いてもらったお礼に折り紙をプレゼントしてるんですが、今回は「高校生」というたぶん折り紙をあんま楽しまないだろう世代が来てくれたので、ディスカッションの時間を多く取りました。
(※ヨーロッパとかアジアと離れれば離れるほど、折り紙は全世代に人気なんですが、韓国・中国あたりだともともと作れる人が多くて、折り紙自体もそんなに珍しかったり高かったりしないんですね。)
✓ 合わせて読みたい SORAプロジェクトについて Artist in Residency TEMI
ディスカッションというよりは、北朝鮮について・日本について、率直に思うところを聞いたんですが、この結果がなかなか興味深かった。もともと、個展の際にSORAプロジェクトの作品は展示予定だったのですが、このアンケート結果も日本語訳と合わせて展示することにしました(参加してくれた高校生たちの許可済。ただ、匿名希望しているので、今回参加してくれた高校名や学生さんたちが写る写真は公開しません。等身大の正直な気持ちを話してくれた彼らに敬意をこめて、みなさんも探さないでください)。
アンケートの本物は今回のTEMIでの個展の時のみ展示。日本語訳はこのブログで追ってご紹介します。
✓ ワークショップの内容はこちら 韓国の高校生とぶっちゃけトーク~南北朝鮮問題と竹島について考える
歴史を知ることは両国の友好関係に必要か
今回のワークショップで私が考えたのは、「歴史認識って友達をつくるのにそこまで必要か」っていうこと。このワークショップを行う前までは、きちんとした歴史を学んでおかなければ、仲良くなれないと思っていました。でもそれが、自分自身で考えたことかと改めて考えてみると違うんですよね。「歴史を知らないと」っていうのは、巷でよく言われている考え。だから私もとりあえずそう考えていて、それが「正しい」と信じていた、というのが本当のところです。割と脳死思考なやつですね、これ。でも今回のワークショップをきっかけに、むしろ歴史認識が弊害になることもあるんじゃないかと自分で考え直しました。
私はもともと、そんなに歴史・経済・政治に興味があるタイプではないんですね。ぶっちゃけ政治経済は苦手です。教養がないと言われればそのとおりです。そもそもほぼ日本にいないので日本のニュースも見ないし、ネットニュースもほぼ見ません。教養がないと言われればそのとおりです(二度目)。で、今回ワークショップを行う前後に、現在の日韓関係の背景などを調べました。
最近のYoutubeはすごいね。他国の記事を翻訳して投稿してくれてるところとかあるのね。当たり前っちゃそうなんだけど、それぞれの国にそれぞれの国からの見方があるので、いろんな方向から見るのって大事だよね。だから私は、どちらかというと現地の人からその人が信じていることを聞くのが割と好きだったりします。
年配の韓国人と話す機会がありましたが、韓国独立のために戦った人を誇りに思っていると言っていたし、南北朝鮮は統一すべきだし、多くの人が(若い人たちも)それを望んでいるという意見でした。ほぼ同年代の韓国人と話した時は「最近の若い人は割とどうでもいい(あるいは統一したくない)って考えてるっぽかったけどなー」って感じ。今回の高校生に聞いたら「南北統一はあんまり興味がない」って感じだった。ちなみに私は、統一されたほうが北朝鮮が平和になりそうでなんとなく日本も助かりそう、くらいの意見です。
んでね、もしも歴史を踏まえて話をしようとした場合、たぶん、反論したくなっちゃうんですよ。「いや、この書簡ではこう決まってるよね」「なんで国際裁判所行かんの」「一度決めたことなのに政権変わって反故にしてんのなんで」「謝ってるのになんで一度も謝ってないみたいな言い方すんの」と。で、もしもそれをした場合、相手も当然「正式な文書ではない」「話し合いで解決すべき」「日本は靖国に生きつづけているし、形だけの謝罪しかしていない」みたいになる。これ、たとえば国際法的、国際裁判所的に「どちらが正しい」と決まったとして、それで両国ともにスッキリするってことになるかな?と。間違ってましたー、負けーって言われたほうはイライラするだろうし、正しいことになったほうは「ざまあw」ってなるでしょw
人狼ゲームから学ぶ平和論
人狼ゲームが好きでね、たまにやってるんですが(実は小説の言葉遣いの参考にしたりしているw)、人狼ゲームに逆村という人狼陣営が多いというルールでプレイするシステムがあります。普通の人狼だと村人陣営が多いんですが、逆村では人狼側のほうが多いので、村人が自分も人狼陣営だと装って人狼を探し、ひそかに殺していくというゲームなんですね。逆村では村人が村人を殺してしまう誤爆がよく起こりやすいので、だいたい「戦犯探し禁止、暴言禁止」というルールになっています。それでも「もっと考えろよ、クソが」みたいな責めはけっこう起こってしまいます。ゲームに白熱しているからなんだろうけど、いくらルールで縛っていても、ぜんぜん起こってしまう。本人が戦犯探ししている認識がないからしょうがないんですよね。謝ってるのに言われ続けるとイライラするし、あなたのこういうプレイがダメですよ、と理詰めしたらしたで相手がイライラする。もともとゲームなんだから勝敗ともかく「楽しくプレイ」できればそれでいいはずですよね。人狼ゲームって担当する役職によって盤面の見え方がぜんぜん違うんです。あなた目線ではそうだろうけど、こっち目線では違うから、っていう立ち位置の違いによって「正しさ」が全然異なる。うん、まるで国家間の争いのようw 人狼ゲームが分からない人にはちょっと分からない説明になってしまいましたが、まとめるとこんな。
・ルールは意味がない
・正しさは目線によって違う
失敗することはいくらでもあります。そんな中ゲーム自体が楽しくなるためには、こういうことを心掛けたほうがいい。
・一度謝ったらよかった人を褒める
・責められてる人をフォローする
特に「良かった人を褒める」ですね。ずーっと誰かを責め続けている人ってけっこういるんですが、自分が責められる側に立った時に本当に辛い。しかもゲームは終わってるから不毛だしね。自分がやらかした時に精一杯謝っても、相手がすぐ「だいじょうぶだよー」って言ってくれずに責めるタイプだと、謝るほどエスカレートしてくんですよね。だから、とりあえずよかったプレイを探して褒めたり、発言が面白かった人を褒めたりして、楽しい空気を全体にばらまいたほうが、割とみんながハッピーになる。そうして少しずつ、「良い」ところを探す文化を浸透させる。
どの国にいる時もそうなんですが、日本人だって言うと、日本の好きなところ、知ってることを言ってくれる人ってけっこう多いんですよね。私も同じく。韓国について話すときは、自分が本当に韓国について好きなことについて話す。ちょっと前に、きゃりーぱみゅぱみゅや倖田來未が好きだっていう韓国人さんに会ったんですが、本当に好きそうな様子が伝わってきてすごく嬉しかった。「仲良くなる」ということを目的にしたときは、もっとそういうことを話したほうがいいんじゃないかと。両国の歴史認識については、100年200年経って関係者が誰もいなくなった時のほうが、冷静に判断しやすいんじゃないかな。歴史について学ぶのが楽しい人はいいけど、そこまで興味がない人にとっては、韓国ドラマ、韓国料理、K-POPを学ぶほうがずっと楽しいし、心から好きだと言えるものも増えるのでは。
展覧会の企画について
今回の個展「生物と非生物の境界についての調査研究」ではSORAプロジェクトの作品以外にもいろいろ出すのですが、SORAプロジェクトについてはこんな感じの展示にすることを考えています。
高校生たちに描いてもらった絵、アンケートのほか、私が今回学んだことと、私が韓国について知っていること。それ以外に、日本の良いところ・韓国の良いところを書いてもらうスペースを設けようかなと。お互いの「良い」ところに目を向ける。「正しさ」は平気で武器になるけど、「賞賛」は愛にしかならないから。
ほかに、リンゴと折り紙を無料配布するというのをやりたいと思っています。先日の記事でも紹介しましたが、韓国語で「リンゴ」と「お詫び」って同じ発音みたいなんですよね。だから、リンゴを渡すと韓国人(特に若い世代)はお詫びだと分かるそうなんです。私自身がお詫びをしなければならないかって言ったら、うーん、って感じなんですが、自分の中に確かに「悪いことしたなっていう思い(Guilty)」はあるんですよ。これについて、少なくとも私は日本で「日本が悪いことをしたんだ」っていう教育を受けてきた証なんじゃないかと考えています。ただ同時に、これから生まれてくるような若い世代にはそういう気兼ねがまったくない次代を残したいなって思います。日本人に生まれたことはその子たちのせいではないし、それだけでなんらかの業を背負うというのは、あまり幸福なことに思えないので。他の国の人と出会った時に、フラットな関係で仲良くなったりキライになったりする状態のほうがいいかなと。国籍のバックグラウンドを交えずに。
プロジェクトに寄せる文言は、現在はこんな感じを考えていますが、ギリギリまで考えます。→最終的にいろんな人と相談し、この時の日韓関係の状況も踏まえ、文言は全カットしました。つづきの話はこちらから「韓国テジョンで韓国人・日本人にいろいろ聞いてみたよ」
はじめに、このワークショップ開催のために尽力してくださったTEMIのスタッフさん、学校の先生方、参加してくれた学生さんたちにとても感謝しています。 どうもありがとうございます。
私は初めて韓国に長期滞在するまで、韓国に長く滞在して大丈夫だろうかと心配する気持ちがありました。 両国の関係があまりよくないので、日本人というだけで何かされないかと心配していたのです。 しかし、昨年滞在したウルサンのアーティスト・イン・レジデンスMOHAで、私は非常に素晴らしい体験をしました。 美味しいものをたくさんご馳走になり、みなでバーベキューを楽しみ、アートフェアツアーや地元の観光ツアーなど、日本語通訳まで用意してもらって楽しむことができました。 現地に壁絵を描くプロジェクトでは、近所の人たちがフレンドリーに声をかけてくれ、何度も飲み物を差し入れに来てくれました。
今回のワークショップを通じて感じたのは、両国の関係改善のために歴史認識の一致は本当に必要なのだろうか、ということです。 私は、正しい歴史認識をしなければ、いい関係は築けないと考えていました。 しかし、正しいとは何でしょう。 歴史に対してさまざまな意見や解釈があり、専門家でない私には、何が正しいのかわかりません。 また、どれかが正しい、と決まったとして、それは両国を幸福にするでしょうか。
友好関係に必要なことは、もっとシンプルなのではないでしょうか。 つまり、「韓国(日本)と仲良くしたいかどうか」です。 私は韓国と仲良くしたい。 それは、私が実際に韓国に訪れる前にもっていた「偏見」を、韓国のふつうの人たちが温かく迎えることで一つずつ取り除いてくれたからです。 リアルを知らずに偏見をもつことが、どれだけ自分自身の世界を狭めるかということに気づけたのです。
歴史認識は非常に重要なことです。 ですが、友好関係を深めるという意味では、相手のいいところを探し、語り合うほうが有効ではないでしょうか。 私は、韓国の素晴らしいところを多く知っています。 そしてもっと知りたいと思っています。 韓国の素晴らしさを、もっと日本の人に紹介したいと思っています。
ここに置いてあるリンゴと折り紙は、ごく普通に暮らす日本の人たちから贈られたものです。 私たちは、韓国と仲良くしたい。 楽しさやおいしいものをこれからも一緒に楽しめる関係でありたい。 どうぞ、好きなだけお持ち帰りください。
地元の人たちにいろいろ聞き取りをした結果、どうやらリンゴだけでいろんな思いが伝わるようなので、文言を大きく削ってシンプルにしました。その分、多くの意味合いを来場者に感じてもらえたらなと思っています(追記2019.7.20)
✓ 合わせて読みたい 韓国テジョンで韓国人・日本人にいろいろ聞いてみたよ
もともと私はリサーチアーティストではないし、時事を扱うのはあまり得意ではないというか、どちらかというとやりたくないタイプなんですね。でも、今回、こうして高校生たちにアンケートをお願いしたのは自分だし、日韓関係も悪化している。そういう状況でいつもどおりの展示をしても(もともとレジデンス応募時の作品企画は日韓がテーマになったものではあるんですが)、韓国の人に響くかっていったら、そこまでではないと思うのです。今回、私は日本で展示するわけではなく、日韓関係の悪化する中、韓国の税金を使って韓国で展示するので。もっと韓国の人の心に響くことを考えてもいいんじゃないかなと思ったのでした。同時に「リサーチ」というタイトルを個展に入れているとおり、韓国の人が日本について、韓国についてどう書くのか、が私にはとても興味があります。
TEMIでは画材代が支給されるのですが、リンゴ代については自分で出したいなと思っています。しかし、大量購入できるほど余裕がないので、1つだけでもリンゴ購入して、一緒に「仲良くしたいよ」って言ってくれる人を募集中です!リンゴ1個400円。たくさん配りたいよ!
✓ リンゴはこちらから購入できます→ 韓国大田(テジョン)での個展でリンゴを配る作品を作りたいのでリンゴを買ってほしい!
みじんこは、リンゴを買いたいよ!ヽ(=´▽`=)ノ