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韓国釜山で開催する市民プログラムのアート企画を考える

みじんこアート, みじんこ企画実績

韓国釜山で開催する市民プログラムのアート企画を考える

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韓国釜山のHongti Art Centerというアーティスト・イン・レジデンスには、地元市民向けのワークショッププログラム(オープンスタジオ)があります。その企画書提出が必要でこれからまとめるところです。脳内整理という意味も含めて、現在はこんな感じで考えているよ!というのを今回はご紹介いたします。

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海外展示・ワークショップの企画のまとめ方

今回は「展示」ではなく市民プログラム向けの企画をつくるのですが、私の場合、ちょうどこの日程と自分の個展の日程がかぶっているんですね。なので両方合わせて1つの企画展示+ワークショップになるように考えてつくります。

まず情報として考慮するのは上記。
1)場所:実際の活動場所・展示場所
2)開催場所の立地:都市か田舎か
3)どんな人が来そうか:メディアも来る可能性があるのか、批評家などアート関係者は来るか
4)どのくらいの人数がきそうか
5)開催期間は

1)はたとえば、会議室みたいなかギャラリーみたいな場所か、で部屋を汚して平気かどうかみたいなことが関わってくるからですね。2)との兼ね合いで騒音がダメなこともある。周囲にアート系イベントが多いような立地だと割といろんなトライができますが、あんまり現代アートに触れなさそうな場所の場合には、理解しやすい間口を広げます。町中にアート作品が多くギャラリーも多いニューヨークでやる場合と、日本の田舎の空き家を使ってやる場合とでは同じテーマでも企画はぜんぜん変えます。キュレーター的な視点をもつということですね。3)もまた同じ。私は海外滞在の時に自分でインターナショナルスクールに連絡してワークショップをさせてもらうことがよくありますが、今回はレジデンスのプログラムなのでアート関係者やメディアがくる可能性もあります。唐突に批評家が来てもそこそこ喋れるように用意はしておきますが、分かりやすく親しみやすくを重視するあまりに自分の作品ステートメントが伝わりにくくならないように配慮します。4)2018年の上海SWATCH5周年イベントでは、招待客のみだったにも関わらず、かなりの人が来ていました。飲み物や食べ物をもったまま歩き回るので、作品の床置きはNGだったんですね。自分の作品は触ってOK、壊してOKなことが多いので、大人数・長期展示の場合には、1日で変容しまくって作品がつまらなくならないか、みたいなことを気にします。

基本プログラムはSORAプロジェクト

釜山は日韓交流プログラムが中止になってるっていう状況的背景があります。私は日本からの正式ななんたらでは全然ないですが、日本人アーティストなのは自明なんですね。日本製品ボイコットも一応つづいている。そういった背景を理解しつつ、まずはメインとして毎回自分がどこの都市でもやっているSORAプロジェクトというアート作品制作に参加してもらうワークショップ+折り紙のプログラムを組みます。下絵の線が描かれた紙に「自分の国を他の国の人に紹介するつもりで制作」してもらうところはいつも通り。韓国テジョンの高校生向けに北朝鮮のことや日本のことを聞いて割とうまくいかなかった感があるので、今回はほかのことをやろうと思っています。


エストニアでのワークショップの様子

合わせて読みたい  SORAプロジェクトの経過 韓国の高校生とぶっちゃけトーク~南北朝鮮問題と竹島について考える

あいちトリエンナーレを意識した体験プログラム

あいちトリエンナーレのことが韓国でどう伝わっているかというと、韓国系のメディアを見ると「少女像が出てるから中止」っぽい言いようなんですよね。それについて日本人の一部が「中止撤回を求める署名」をしていると。これだけ聞くと、日本国が少女像を検閲、日本人の一部は少女像をアリだと言っている、っぽくも見えません? そこがだいぶ正確じゃないよなって思うのです。
中止の原因として、少女像は確かにあったけど、昭和天皇を燃やした作品(遠近を抱えて)、特攻隊の旗を使った作品(時代の肖像ー絶滅危惧種 idiot JAPONICA 円墳ー)も一因としてあったはずなんですよね。ネット見てる上での肌感としては、少女像と天皇写真が2大、次点に特攻隊って感じの体感があります。あと、中止撤回を求める声はイコール少女像素晴らしい、日本謝れではなく、「いかなる表現であれ、表に出されることはアリとし、作品にまつわる議論がなされる機会を奪わないこと=表現が不自由になることにより議論の機会損失を懸念」がメインですよね。そもそもこの展覧会には慰安婦女性の写真展示もあったし、韓国の団体からの「旭日旗を使ってる」というクレームによってMoMAでの展示が中止になった横尾さんの作品もある。で、そちらのほうは今回はまったく取り上げられていない。(日本でも美術にあまり興味がない人たちの間では少女像のみが原因だと考えている人もいるのでは。また、この件だけが大きく取り上げられたことで、まるであいちトリエンナーレ=不自由展その後、みたいな印象になっている気もします。不自由展はあくまで一つの展示企画)
また少女像をつくった作家夫妻は、ベトナムピエタという韓国軍による民間人虐殺の犠牲となった母と子の慰霊の像も制作しており、そちらは済州に設置されています。(詳細なテーマは作家に直接話を聞いてみないと分かりませんが、母子の像なのでライダイハンのことも意図されているのだと私は考えています)
表現の不自由展は再開の目途が立ったとされていますが、キュレーションの甘さ(一般に作家の意図が穿って伝わりすぎ)も指摘されていたので、そのあたりの考慮もされるようでしたね。

参考リンク  「ベトナムピエタ」像、済州に建設される 表現の不自由展・その後 「表現の不自由展・その後」、展示再開の方向性定まる。検証委員会が中間報告

可能であれば上記について話す機会があればいいのですが、そうでなくてもある程度の意図が実際に来てくれた人経由あるいはスタッフさん経由で伝わるように、来場者のエピソードを貼る試みをしようと思っています。具体的にはモニカ・メイヤーさんの展示手法を模して閉じられた不自由展の壁に貼られた文言「あなたが日常の中で見つけた差別や偏見、我慢やあきらめを強いられた具体的なエピソードを教えてください」と同じ体験プログラムを行う予定です。こうして同じ体験を韓国でも行うことで、日本で「不自由展その後」が中止になった後、どんな動きがあったのかというのをちょっとでも知ってもらうということ。また、私自身も実際にあいトリも行ってきたし、その後の動きもそれなりに追っているので、質問をいただけたら応えていくつもりです。 それともう一つ「香港について知っていることを教えてください。また、香港へのメッセージがあればお願いします。」という質問を書いて貼れるスペースを設けます。これは実際にあいトリに行って感じたこと。日本では不自由展の中止が大きな問題となり、そっちの協議が進んでいるし、そちらへのインターナショナルアーティストの連帯は見られました。しかし、香港のアーティストさんが「香港について知って欲しい」っていう声をあげていたことについては、コメントが会場にペラっと置かれてはいたけれど、割とスルーなんですよね。日本人アーティストの韓国ワークショップで日韓関係を考えよー!ってなっても、なかなか正直な気持ちを出せないだろうし、お互い気を遣ってしまう部分もあると思うのですが、香港のことを考えよう、なら「確かに一緒に気にするくらい、心に留めるくらいはできやすいかも」というのもなりやすいかなと思うのです。また、私自身にも香港人の知り合いがいて、最近メッセージをもらったりしたこともあって、なかなかに他人事ではないです。

参考リンク  The Clothesline

これ以外にも、もともとの個展の企画としてお菓子の組み合わせで自分向けの「薬」をつくる「調剤薬局」という展示企画もあるので、割と市民向けにも楽しめるかなと思っています。韓国ではムンジェイン政権になってからアートについてはプロフェッショナルアーティストの制作支援よりも割とこういう市民向けのプログラムへの助成に力を入れるようになってきてるという話を聞きました(個人の意見です)。日本で助成金をもらったことがないので日本ではどうなんでしょうね?とりあえず、日本は30歳を超えてからアーティストを目指す人向けの支援制度は激減するので、助成もらうなら学生時代とか早いほうがいいよなって感じします。私は年齢関係なくチャレンジできる土壌になって欲しいのですが、やっぱり学生向けの支援が多いかなっていう気もする。まぁ若者が国の未来を担うのでそれはとても良いことですが。

声を上げる機会をつくることが大事

たとえば日本では、LGBTQの人と出会う機会がなっかなかにないです。海外だとけっこう当たり前に同性カップルがいるので、日本はやっぱり「出にくい」環境があるのかなぁって感じてしまうんですよね。アートの役割として「議論をつくる」というのがあります。たとえば難民だったり死刑だったり、障がいだったり環境問題だったり。憲法や歴史認識もそうですが、機会がないと考えも深まりません。例えば世界で初めて安楽死が合法となったオランダでも、30年がかりの議論の末に許可されることになったのです。歴史だって安楽死だって、絶対Aが正しいとかないはず。その「正しさ」は時代によって変わります。奴隷制や植民地化が「正しかった」時代だってあったんですよね。30年前の正しいは今の正しいと同じでいいのか。社会を取り巻く状況が刻々と変わっていくのであれば、それに合わせて議論をし、なにが今にあっているのか、を話し合うことが大事ですよね。それこそいろんな立場の人と議論をすること。その「きっかけ」をくれるのがアートなんです。アートが与えるのは問いかけであり、絶対Aであるという答えではないし、ましてや誰かを責めるものでもない。今回、あいちトリエンナーレを巡り、いろんな議論が広がり、それはある程度あまり美術にも興味がない人たちにも触れたと思うのですよね。そういう意味ではとても価値があったと私は思っています。今後の様子も見守りつつ、私もまた勉強していきますね!

合わせて読みたい  現代アーティストになりたい人のための~初心者の第一歩から海外展開まで役立ち記事まとめ


みじんこは、諦めてるよ!ヽ(=´▽`=)ノ

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