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エストニア南部の村のアーティスト・イン・レジデンスMoKS~質の高い現代アートが田舎に存在できる理由について考える

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エストニア南部の村のアーティスト・イン・レジデンスMoKS~質の高い現代アートが田舎に存在できる理由について考える

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エストニア南部の村Moosteのアーティスト・イン・レジデンス、MoKS。本当にスーパー田舎なので、自分の仕事にフォーカスするぞ!と思っていたんですが、けっこういいアーティストさんたちがとっかえひっかえ来るので、嬉しい誤算でして。日本の田舎でこれだけの現代アートをそろえるって難しい気がするんですよ。なんでここではうまくいってるんだろうというのを考えてみました。

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田舎のレベルが日本と海外ではけっこう違う

日本で「田舎」と言われてももはや田舎と感じないのですが、日本の田舎は海外の田舎と比べて規模が全然大きいです。日本の人口は世界10位(約1.3億人)。エストニアの人口(約132万人)の100倍以上です。エストニアの総人口は、青森県とか奈良県あたりの総人口と同じくらいのよう。ドイツでは3家族だけ、みたいな村があるようだし、小さい村だとほんとに2時間くらいで村全部を歩けちゃうくらい。今いるMoosteも人がいる集落エリアは本当に小さくて、それぞれの村を長い道がつないでいる、という感じです。日本の田舎は田舎と言っても人がいっぱいいるし、大規模商業施設もある。Amazonも届く。都会でもネットがないのが困りものですけどね。ドイツ、ルーマニア、フィンランド、エストニアは田舎すみずみまでネット環境がかなり充実日本の田舎の規模を考えると、こんなに大都市なんでネットがないんだろうという気がしてしまうくらいです。今いるエストニアの村のローカルカフェでもWifi使えるんですよね。遅くもないですし。

参考リンク  世界の人口ランキング 都道府県の人口一覧(Wikipedia)

北欧の現代アートは質が高い

フィンランドのトゥルク、マンッタのレジデンスに参加した時に感じたのですが、町の規模は小さくても、フィンランドの現代アートのレベルはけっこう高いなーという印象がありました。美術館の展示がよかったんですよね。トゥルクのほうは町のギャラリーもそこそこ。いわゆる飾り絵っぽい感じの作品のギャラリーがあまりなかったんですよね。展示に工夫が見られるようなところもありましたし(展示がしょぼい作品はだいたい現代アートではない説を推す)。

合わせて読みたい  アートを通じて社会を知る~現代アートと難民問題について(フィンランドの美術館の展示レビュー)

エストニアのレジデンスMoKSでは現在、ラトビアとの共同アートプロジェクト「Waste」が準備中で、応募者の中から14組のアーティストを選抜。「Waste」をテーマに作品制作するアーティストさんがとっかえひっかえいらっしゃってます。私が会っただけでデンマーク人、イタリア人、エストニア人、スペイン人。7組がMoKS、7組がラトビアで制作し、できたものをエストニアとラトビアの6カ所で展示発表するようですね。みなさんキャリアも技術もあって、おもしろいものをつくっていかれます^^ 間近で見れて嬉しい。

参考リンク  Moks Residency

日本の田舎で現代アートの展覧会を開催したり、現代アートが活発になるような土壌をつくろうとした場合、けっこうハードルが高いかなと感じるのです。共感してくれる人、協力してくれる人が少なそうなんですよね。じゃあなんで、エストニアの田舎でこういう試みがうまくいっているのか。正直、Moosteって日本の田舎と比べたらスーパー田舎なので、ここでこれだけのクオリティのアートが見られるってけっこうすごいよなって思うんですよ、ほんとに。これができる理由の一つは、コミュニティが小さいからかな、と考えています。変化の少ない環境の場合、コミュニティが「防御」機能を果たすので、コミュニティ内の環境が安心して育ちやすいんですよね。ただその代り、コミュニティがガッチリしてると、「外部の人」が入って来にくくなる。村ルールみたいなのがあったり、みんな知ってるけど自分だけ知らないみたいな自体が起こりやすいから。現代アートが好きみたいな、コミュニティ内にあまり浸透していないものが好きな場合、理解者が少なくて辛い思いをするかもしれない。少しずつ過疎化してしまうような場所なら、外部の人が入ってきやすい環境をつくったほうがいいんですよね、ほんとは。現代アートはそこらへんをフォローできるはずなのです。
というのも、保守的な人は具体的な分かりやすいものが好きですが、思考するのが好きな人、違う価値観に出会いたい人は現代アートを好む傾向があるからですね。現代アートのコレクターさんに聞くとだいたい「分からないものが好き」「違う価値観をくれるから好き」って言いますしね。つまり、質の高い現代アートがある場所には、「保守的でない」人が集まりやすい。
しかし、田舎のコミュニティは「保護」機能がメインなので、「分からない=役立たない」と見なしてしまうような暗黙の了解が生まれやすい。よく分からないものを排除したほうが、コミュニティ内が安全に保たれるからです。すると、現代アートみたいなものが存在しづらくなる。
MoKSの場合はディレクターさんが世界各地のアートプロジェクトのキュレーションをしたり、カンファレンスに参加したりしているので、視点が広いんです。ご本人はMoosteの近くの村の出身なんですが「現代アートはタリンだけではない」とおっしゃってるように、ここに質の高い現代アートを根付かせたいという強い意志がある。キュレーターの質の高さと、コミュニティの小ささによる「点」の影響力の大きさで、この土地に現代アートが根付き始めているんじゃないかと。

こういうことを日本でやるとしたら、まずはコミュニティ分割するところから始めないといけないかなと。若い人だけ、とか田舎で起業したい人だけ、みたいなコミュニティに協力を呼び掛けて影響力を強くしていくと。まぁでも、あえて現代アートをそこに根付かせる必要があるのか、という気もしています。草間彌生さんの出身地(長野県松本市)みたいな理由があるなら、地元としては「現代アート」推ししやすくなるので、根付かせたら観光客やアートファン誘致につながるかなという気はしますが。世界のKUSAMAを町の人も誇れるだろうし。あるいは自分が日本の田舎暮らしの現代アーティストで、ほかに移動するのが難しいというのであれば、コミュニティ分割して影響力を強めていく、というのが勝ち筋なのかなぁと考えたのでした^^ 作品の紹介はまた。

合わせて読みたい  現代アーティストになりたい人のための~初心者の第一歩から海外展開まで役立ち記事まとめ


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