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小崎哲哉さんの『現代アートとは何か』から学ぶ現代アートのすべて

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小崎哲哉さんの『現代アートとは何か』から学ぶ現代アートのすべて

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良著を濃縮還元してお届けするみじんこブックレビュー。今日は小崎哲哉さんの『現代アートとは何か』。現代アート関連のことを全方位網羅してる感じの本です。今日は特に印象に残った言葉をご紹介。

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現代アートとは何かというタイトルにあるように、現在の現代アートの問題点や批評家、アート鑑賞について、バーゼルやヴェネチアなど有名なアートフェアの役割とは、など多岐に渡る情報提供と考察が書かれててすごかったです。まじで全方位網羅してる感じ。
あとがきの直前くらいに全体のまとめが短く書かれているので、これから読まれる人はそこを読んでから最初に戻るととても読みやすいかなと思います。

現代アートは哲学

現代アート、とりわけコンセプチュアル・アートは、それ以前のアートと異なっていると思うことがある。現代アートは描写ではなく哲学に関わっている。たぶん我々は、混乱を避けるために何か別の名称で呼ぶべきだったのではないか。(177ページ/「世界劇場」展のカタログ、ウォルシュとマルタンの対談からウォルシュの問い)

絵描き(ペインター)と現代アーティストって、職業的にかなり違うなぁって思うのですが、日本だと画家→アーティストに名称変更してるようなところがあって、両者が混ざってしまってるんですよね。これはお互いにとって不幸だなと思うのです。純粋に絵を描きたい人に対し、現代アーティスト側がコンセプトを求めるてしまうかもしれないし、哲学を磨いている人に対し、画家は画面の美しさを求めてしまうかもしれません。

現代アートはもはや「美」を志向していない。(286ページ)

筆者は現代美術ではなく現代アートのほうが呼称として適切、ということも言っているのですが、私もとても賛成です。というのも「美術」っていう言葉と絵を描くという行為が非常に密接に結びついているからですね。それがある種、鑑賞者あるいは未来の作り手に対して偏見のひとつになっている。とはいえ、まったく新しい言葉をつくって浸透させるまでには時間がかかるので、外来語とかをうまく取り込み、これまでの美術とは違うイメージの言葉を浸透させたほうがいい気がしますね。たとえばメンタリストみたいな感じで。
というのも、現代の現代アート(笑)は、知識や思考の集積と仮説からつくられていることが多く、それが鑑賞のおもしろさになっているんですよね。そういう内面的な対話のおもしろさが、ジャンル名からも伝わってくれたら、見る人の鑑賞スタイルに変化が起こるんじゃないかなという気がするのです。

昨今の現代アートの傾向

優れた現代アートは今日、すべからくコンセプチュアルなインスタレーションであるべきなのだ。(385ページ)

「トップアーティスト」と呼ばれる人たちの作品のほとんどがインスタレーションで、平面画や写真の数が減ってきているということが、本書では言及されていました。美術館とかヴェネチアビエンナーレみたいなアートイベントだと、大型のインスタレーション作品のほうが映えるし多いような気がしますよね。
平面よりインスタレーションのほうが、鑑賞者が受け取る情報量が多いということも、本書では言及されていました。私は、単に平面が減ってるというわけではなく「空間をつくる意識が求められている」と考えました。

たとえばこちらは直島の杉本博司さんの作品です。こちらは写真単体を見ると平面なんですが、全体としてインスタレーションなんですよね。海面と目線が合うような位置に設置されている。
ニューヨークのギャラリーとかを巡っていて感じるのは、作品は見るのではなく「肌で感じる」ということ。平面作品であっても、個展やある一定の自分だけの空間を与えられての展示の場合は、空間をつくる意識で設置する必要があると私は思っています。作品しか見ていない状態で展示すると、だいたい壁に並んだ展示になります。なので、その空間に入った時にスイッチが入らないんですよね。
良い展示は展示空間に入った段階でなんか違うのが分かる。これについてはキュレーターの手腕などにも寄りますが(アーティストが展示しないケースもあるので)、作品展示をする場合には、舞台をつくるのと同様に「空間をつくる意識」というのがとても重要だと私は思っています。自分ができているわけではないですけど、この意識をもって毎回精進しないと、空間が沈黙してしまう。それはアート作品の展示としてはやっぱりもったいないなと考えていますよ!

批評家が力を失う

批評や理論は影響力を失っているというのが本書で言われていましたが、アーティストは理論を求めているということも書かれていました。実際、アーティストは制作作業がメインなので、知識という意味では批評家にはとても勝てません。だから、批評家が自作を解説・位置づけしてくれるととても助かるんですね。
アートって使われる用語がもともと専門用語だらけなので、そこをもう少し緩和して、アートのおもしろさをやさしく教えてくれる批評家がいたら、現代アートというものを一般と結ぶためにとても重要な役割になってくれそうな気がしてましたが、、実際にニューヨークのMoMAでアートツアーをやった後なのに誰も内容を覚えていなかったみたいなケースもあったようなので、解説は一般よりももうちょっと積極的なアートラバー向けかもしれないですね。。

アーティストとは、単に社会的な存在ではない。模倣についての理論の枠組でガブリエル・タルドが造語した表現を用いるなら、超社会的な存在である。(略)真に超社会的になるためには、自分自身を社会から孤立さえなければならない。(154ページ / 「理論が見守る中で」グロイス)

超社会的っていう言葉はなんとなく超人ぽくて惹かれるのですが、アーティストとしてはこういうかっこいいっぽい言葉に踊ってしまうのもいけなくて。超社会的とはなにか、そもそも社会とはなにか、みたいなのを考えないといけないですね。私的には、社会に属しながら社会を俯瞰して見るような多視点をもっていること、と解釈しました。

理論的に鑑賞する

現代アートの3大要素を「インパクト、コンセプト、レイヤー」と本書では言っています。また、鑑賞法のまとめがあったんですが、これも興味深かったので紹介させていただきますね。

現代アートの作家が抱く創作の動機
1)新しい視覚・感覚の追求
2)メディウムと知覚の探求
3)制度への言及と意義
4)アクチュアリティと政治
5)思想・哲学・科学・世界認識
6)私と世界・記憶・歴史・共同体
7)エロス・タナトス・聖性
これを誤読を恐れずに数値化しながら鑑賞すると読解の助けになる。(398ページ)

鑑賞するときは、これを5段階評価でメモしながら、何が強く表されているかなーというのを、誤読を恐れずに考えていくと、作品の訴えることが分かりやすいよ、と。「誤読を恐れず」っていうのがなによりも大事なポイントで、ここまでしっかりしなくても、作品の前に立った時に「自分がどう思うか」というシンプルな質問を投げかけるのもいいと思いますよ!
鑑賞法としてはVTS(Visual Thinking Strategies)という手法もあるので、こちらもどうぞチェックしてみてください!

合わせて読みたい  子どもの学力を伸ばす美術鑑賞法~思考力を鍛えるVTS(ビジュアル・シンキング・ストラテジーズ) 現代アーティストになりたい人のための~初心者の第一歩から海外展開まで役立ち記事まとめ

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みじんくん と みじこちゃん

「美だよっ!」
「超みじんこ的だよー」

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