上海での展覧会の作品解説第2弾。今回は展覧会の開催前、準備段階に考えていることをまとめてみました。
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制作前に確認すること、展覧会の事前設計
展覧会の開催は、作品を単体でつくって売るのとは全く違い、空間自体をつくり込むことができます。ここは作家としては最も楽しいことの一つ^^。
私が展覧会の時に考えることは、1)新しいチャレンジをすること、2)作品のプロモーションになること、3)作品を売ること。2、3を考えることは特にギャラリーに対する貢献にもなります。
今回の展覧会での作品以外の面での新しい試みは、他の作家に誘いをかけて2人展にしたということ。全然新しくなさそうな試みですが、コラボが苦手な私としてはかなりチャレンジングな試みだったのです。一人でやれるなら一人がいいなって感じ。今回、一緒に展示したスペイン人のMiguelさんは、私と同じくサイエンスのバックグラウンドがあるため、最終的に「美術実験」をテーマにした展示となりました。共通のテーマがあるかと思いつつ、私自身はすでに確定したアーティスト・ステートメントやコンセプトがあるため、それとの整合性がなかなかうまく取れずに、何度かテーマ変更をかけさせてもらいました。
この過程が非常に面倒で(笑)、もう今後は自分が先頭になってグループ展を仕切ることはすまい、と決意しました。向いてないことがよく分かったww
その他、作品としてのチャレンジは当然あるので、それはまた後日。
✓ 参考リンク Miguel Moreno
プロモーションに関しては、いつもインスタレーションを入れるようにしています。これは平たくいうと「写真映え」のため。現代ではセルフィー、SNSが流行っているので、写真映えする作品があると、勝手に拡散してもらえます。写真で引きがつくれると、それを見た人がさらにギャラリーを訪れてくれることもあります。大型インスタレーションは売るのは難しいけど、こうして自分の作品を誰かに見てもらえる機会を増やすことを意識しているんですね。
予想通り、多くの人がインスタレーション内でセルフィーしまくってくれました。しかしね、気をつけてほしいのは、おっきい作品つくったーっていうだけだとプロには「あーあ、単に大きいってだけで自分すごいとか、現代アートだとか思って満足しちゃってる勘違いやさん」としか思われないので。コンセプトもつくり込みます。
作品が売れることを考えるのは、ギャラリー運営にもお金がかかってるからです。展覧会をするたびに赤字になっていては、ギャラリーはつぶれるしかありません。自分を推してくれるギャラリーが少しでも長く残ってほしいと私は考えるので、作品の売れやすさも考える。というか、基本的にギャラリーで作品が売れなければ、次から声がかからないんですよ。だからもう、マジで人生かかってる。それが展覧会。
売りやすさというのはたとえば、大型インスタレーションは見映えはいいけど、無名の新人が売るのは難しいとか、そういうこと。ギャラリーがつながっているコレクターにもよりますが、世界各国のメルマガを見てても、圧倒的に平面が多いのを考えると、やはり現在はまだ平面画が主流なんでしょう。
もちろん売るのはギャラリーの仕事です。ギャラリーは自分が知ってるコレクターに声をかけ、作品を買ってもらおうとする。しかし「悪臭がめっちゃ出てるよ♪」みたいな作品を売るのはなかなか難しいはず笑。そういう作品を出してももちろん全然いいんですけど、私だったら出す時期と場所を考える。尖ったコンペに企画として出すか、アイデアとして自分の中に積んでおいて、そこそこ名が出てきた時に出す。効果的なマッチングを考えるということですね。(これは優等生的解答なので、攻めたい人はガンガンどーぞ。自分がこれを最初からやりたいなら、自分でギャラリーつくっちゃうね)
展覧会の裏事情と「創造性」について
上海での展覧会はギャラリーオーナーのご好意もあって開催できたことです。日本のUNAC TOKYOもそうですが、あんまり商売っ気がないギャラリーの場合は、かなり伸び伸びやれる。もっとシビアなギャラリーでは、売れると判断された作品しか扱ってもらえません。作家・作品選びはギャラリーの死活問題でもありますから。上海のSHUNギャラリーはそういう意味では、なるべく多くの作家にチャンスを、という作家の育成を考えたギャラリーでした。
✓ 参考リンク Shun Art Gallery
今回はもともと参加予定だったアーティストが一人、病気で参加ができなくなったので、私が2部屋使うことになりました。また、この展覧会の直後がしりあがり寿さんの大型展示で、その準備に思ったより時間がかかることが判明。アンインストールにかけられる時間が直前でかなり短くなりました。私は中国での別の展覧会に出席する関係上、アンインストールの日は来られないことに。そのため、私がいなくても片づけられるように、展示企画を少し変更しました。
「この日程って言ってたのになんだよ!」っていうことは簡単です。しかし、私はギャラリーの好意からの開催であることを理解しているし、そもそも「創造性」とは何かを考えてみてください。新しいアイデアを考えつくことでしょうか?
スティーブ・ジョブズは創造性を「つなぐ力」としています。文化人類学者の川喜田二郎は「創造性とは、発明発見の能力ではなく、問題解決能力のこと」としています。どちらにしろ、急な変更があって怒る、ってものすごくよくあることで、何一つ新しくない(創造的でない)ですよね。怒ってるだけでは問題も解決しません。なので、状況が変化した時は、私は自身の創造性を試されていると考え、みなが幸せになる解決策を探ります。
✓ 参考リンク ジョブズは「創造性とは繋ぐ力」と考えていた 創造性とは何か(川喜田二郎)
というと、聞こえはいいですが、こちらがみんなにとってより良い方法を考えようとしているのに、聞く耳を持たれないと激切れします(Oumaは基本的に短気です)。自分が納得できないことについてはなんとしても粘る。相手に聞く耳をもたす方法はもっと創造してかないといけないですね。
とにかく、わがままをいう、自分勝手なことをするのがアーティストなわけではないですから。何かがあった時、私はかなり初期の段階で、とあるアートディレクターさんに言われた「インスタレーション作家はどんな状況に置かれても、柔軟に対応できないといけない」という言葉を思い出します。
✓ 参考リンク 獣医師を現代アート作家に変えた12の言葉たち
自分でできることは全部やる
ギャラリー、鑑賞者、アーティスト(自分)にとってみんなが嬉しいことは全部やる。他にやれることはないか考える。無名作家の基本姿勢です。これをちゃんとやっておくことで、やらなくてよくなった時に「誰かがやってくれてる」ありがたさも分かるはず。
たとえば、掃除や片づけ、通常の営業時間外にオープンする場合、自分が鍵を開けて常駐するとか。「プロのアーティストはそんなことしないよ」という意見もあるでしょう。しかし、そんなん知るかwと。そういうのを嫌がるギャラリーもあるので、もちろん相談が必要ですが、特にバルセロナでの個展の時には、午前中に市内のギャラリーをまわって展覧会チラシを配り回り、通常クローズの日曜は自分が朝から開けてお客さんを迎え、さらに毎日お掃除してました。
だいたいどこの土地でもやるのは、現地の日系メディアへの連絡。自分で探したり問い合わせたりして、展覧会情報を送る。
バルセロナでは超売れっ子だけど傲慢な作家が、数年で売れなくなって誰も味方しなくなった話を聞きました。いい新人がどんどん出てくる中で、忘れられていくのだってあっという間です。まして自分は天才でもない。できることをやって、1人1人、味方を増やしていく。もちろん、嫌なことはしなくていいです。私だって町中の掃除とかしないw 来てくれた人全員にお礼状を書くとかはしません(する作家さんもいますね)。あくまでも自分が「できること」を全部やる、です。自分も含めた全員が喜びそうなことをやる。メディアへの連絡なんかはその典型ですね。ギャラリーもお客さんも自分も嬉しい。
今もフランスの教会でイベントがあるたびに、ゴミ捨てとかテーブルセッティングとか手伝ってますよ。
ちょっと長くなったので、実際に展示した作品の解説についてはまた次回。思考過程を共有することで、拙作も誰かのためになったらいいなと思ってます^^
✓ 合わせて読みたい 「Art-Lab/美術実験室」作品解説1~Oumaお気に入りの作品は? 現代アートについて考える~初心者の第一歩から海外展開まで役立ち記事まとめ
みじんこは、わりと優等生思考です!ヽ(=´▽`=)ノ